106 僕らは天に楯突く武器を握る




 無数のデータの中から、最善のものを選りすぐり、彼らに分け与える。幼年期のデータ、成長期のデータ、成熟期のデータ、完全体のデータ。目にも留まらぬ速さで振り分けられたデータは、一つの可能性を生み出した。

 ――…これだ。このデータを、彼らに植えつけられれば。

 膨大なデータを処理する頭は、今までの比ではないくらい、割れそうに痛い。それでも生み出した可能性を、必死に手繰り寄せた。


「ヴォーグレイモン、メタルガルルモン――あなたたちにすべてを託します」


 二つの聖なる力は、オレンジ色の光、青色の光にわかれていた。それぞれが勇気と友情の結晶だった。
 一つのかけらから、彼らは満を持して生まれた――。


「アグモン、ワープ進化ァァ!!――ウォーグレイモン!!!」
「ガブモン、ワープ進化ァァ!!――メタルガルルモン!!!」


 一匹は、勇気をまとうオレンジ色の体躯をもつ竜戦士。もう一匹は、友情を背に全身を機械化したサイボーグ。
 天空から舞い降りた聖なる光に身を包まれた二匹は、精悍な顔つきで敵を前にした。


「なんか…えろう差ァつけられましたなぁ」
「ああ…そうだな…」


 そう返すヤマトは上の空だった。あまりの出来事に茫然自失の事態に陥っているようだった。


「栞…あれが…究極体、とかいうやつか?」
「…うん、そうだよ。彼らは進化した。彼らの中にあった可能性は、彼らの願いを受け入れたから。――体は小さくとも、その力は桁外れに大きいはず」
「進化…あれが…」


 気高い瞳がまっすぐ二匹を見据えていた。その額にはうっすらと脂汗が浮かんでいる。
 巨大な闇の前に無防備な力を見せた代償はおおきかった。少しずつ息を整え、ぎゅ、と唇を結んだ。今はただ、隣にいる一馬の存在がありがたかった。彼がいれば、気を抜けば襲い掛かってきそうなこの闇に飲まれずにいられた。


「行くぞ!!」


 先に動いたのは、ヴォーグレイモンの方だった。
 彼の大きさは二メール強、メタルグレイモンよりもだいぶ小さくなっていた。そのまま助走をつけると手甲から伸びる長い爪を頭上でひとつに合わせ、竜巻のように回転をした。オレンジ色の大きな光は、ヴェノムヴァンデモンの胴体に突き刺さる。徐々に回転数をあげ、ヴェノムヴァンデモンの体を押していく。
 今までとはくらべものにならないパワーについていけなかったのか、ヴェノムヴァンデモンはその力に負け、砂煙をあげながら地面に倒れ伏した。ゴロゴロと、フジテレビの球体展望台が地面をころがる。


「いけーっヴォーグレイモーン!!」
「つよいつよーい!!」


 次いでメタルガルルモンの出番だ。彼の瞳が爛々と青く光ったと思ったら全身の発射口が開き、そこから幾重ものミサイルが一斉に発射された。それは余すことなくヴァンデモンに降り注ぎ、着弾したその場から順にヴェノムヴァンデモンの巨大な体を凍り付かせていった。

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