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静止したヴェノムヴァンデモンの姿を、ビッグサイトに残っていた空たちも見つめていた。「一体、何が…?」先ほどまで激しい戦いを繰り広げていただろうに、一体何が起きたというのだろう。 だがそちらに赴けない自分たちに確認する術はない。もどかしさが彼女たちを襲っていた。
その時、ビッグサイトの中からシンが姿をあらわす。中の人々の様子を見に行ってくれていたのだが、その表情は晴れない。
「シン兄さん、父さんたちは…?」
「相変わらずさ」
溜息をともに聞こえてきた言葉は、表情から分かりきっていたことだが、丈は肩をおとした。
「きっとヴァンデモンを完全に倒さない限りもとに戻らないんだよ」
「…あたしの、パパとママを…」
横たわる両親、うつろな瞳は自分を見つめない。何よりも自分を守ってくれ、愛してくれる両親は、あいつのせいで。ミミはぐ、と顎を引き、前を見据えた。
「ヴァンデモンを倒したい…!」
「ミミ、あたし、まだ戦えるよ!」
「パルモン…!」
「うん!」
戦いで力を浪費して、疲れているだろうに。パートナーの憂いを晴らすためなら、ミミが笑うなら、いくらだって頑張れる。パルモンは笑顔で答えた。
「空ァ」
甘えるようにすり寄ったピヨモンに、空は瞬時に理解した。彼女はもう甘えているだけのデジモンではなくて、空を守る、空と戦う勇敢なデジモンなのだ。まっすぐ自分を見つめるその瞳に、空は一度唇をかみしめ、大きく頷いた。母のために、そしてあちらで頑張っている仲間や、親友の傍で戦おう。 9人の力を合わせれば、どんな難所だって乗り越えていけるはずだから。
「キミたち…」
呆然とつぶやいた丈の足元で、ゴマモンはわざとらしく大きくため息をついた。え、と聞き返そうとしゃがみこんだのをいいことに、ゴマモンは一気に丈の頭までのぼり、腕でヴェノムヴァンデモンを示した。
「“行くぞゴマモン!”――ってなんで言えないのかなぁ?」
いたずらっぽく笑みを浮かべたゴマモンに、丈も思わず笑い、それから大きくこぶしを振り上げた。
「よぉし、行くぞ、ゴマモン!!」
「合点だい!!」
叫びながらフジテレビの方に向かっていく丈のあとに続き、シンに中の人々のことを頼んだ空とミミも走り出した。
目指すは仲間たちの場所。今度は、自分たちもともに。
「…無茶はするなよ」
シンの言葉は、風に乗り、彼らのもとへと届けられた。
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