「うわああああ!!」
「ぐっ、!」
「ウォーグレイモン!!」


 絶望が、子供たちの顔に浮かぶ。


「ッ…絶望を、希望に変えなきゃ…。闇を、光に――」


 悲鳴が響く。ぐちゃぐちゃに塗りつぶされていく脳内に届く。
 ふるえながら栞は一馬を掴んでいた手を離し、それから強く自分の右足をたたいた。「栞!?」驚く一馬の声に、栞は痛みを抑えながら、笑って見せた。足は痛みでガクガクするけれど、立ち上がらなければ。踏んばらなければ。痛みに恐怖するのは、自分だけではない。痛いのは、戦ってくれているデジモンだって同じだ。
 もう何もできないって自分を卑下にするのはやめよう。自分しかできないことはたくさんある。他の子供やデジモンたちにしかできないことがあるように、栞にだって栞にしかできないことがある。


「私の願いが、祈りが、みんなを強くして、そしてみんなを守ってくれますように――」


 ―その時、子供たちの胸元で、淡い光が生まれた。
 穏やかで優しい光の粒子が、きらきらと様々な色を放つ。それは子供たちの勇気となり、希望となるようにキラリと輝いた。子供たちは、それを手に取った。手の内に納められた紋章から天へと放たれた色鮮やかな光が、強い力となってヴェノムヴァンデモンの四肢を押さえつけた。ヴェノムヴァンデモンの顔が醜く歪み、振りほどこうともがくも、その光はどんなものよりも頑丈でびくともしない。


「エエイ、小癪ナ!守人メェ、選バレシ子供タチメェ!!」
「しゃべった…!?」


 腹部から現れた顔は意志を持っているらしく、甲高い声でわめき散らした。
 「そうか…!」太一は眉を寄せた。


「あの化け物がヴァンデモン自身なんだ!――ウォーグレイモン!!」


 太一はウォーグレイモンを振り返る。ウォーグレイモンには、言われずとも太一の思考が読み取れた。「分かった!」大きく頷いた。―やることはただ一つ。全員が理解した。
 メタルガルルモンで、彼は真っ先に駈け出し、地面に転がっていたフジテレビの球形の展望台を足で蹴り、「ウォーグレイモン!」、パスをした。 ナイスパス、と一馬は小さくつぶやいた。



「「「「「「「「シュート!!!」」」」」」」」」



 九人全員の声が重なる。
 
 おねがい、とどいて―――!


「うおおおおおおお!!!」
「ギャアアアアアア!!」


 ウォーグレイモンにより蹴られた展望台が、見事腹部というゴールに決まった。だがこれだけでは終わりではない。―とどめだ。


「ガイアフォース!!!」
「コキュートスブレス!!!」


 二体の究極体の必殺技が、一斉に放たれる。蓄積されたダメージが、倍増する。



「ウオオオオオオオオオオオァアアアアアアアア!!!!!」



 地平を揺るがす絶叫が響き渡る。
 ヴェノムヴァンデモンの強靭な体が、まるで蜃気楼のように揺らめきを見せ、そして。


「――さようなら…」


 まるで、波に掬われ、削られていく砂の城のように、足元から崩れ落ちていく。最後まで絶叫だけが、残っていた。

 そうして、アンデッドデジモンの王は、この世からデリートされた。
 文字通り、完膚無きまでに彼のデータは砕け散った。


17/08/06 訂正
15/02/17

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