「あたしのパパとママ、大丈夫かなぁ…」
「大丈夫よ、きっと」


 まるで自分に言い聞かせるように、空は強くつぶやき返す。大丈夫だ。大丈夫であってほしい。だって、元凶であるヴァンデモンは倒したのだから。この異様な空の様子は、ヴァンデモンと関わりのないものなら、きっと――祈るように目を閉じた。
 朗報が届いたのは、そのすぐあとのことだった。暗闇の中、照らされたバイクのライトのように、ビックサイトからたどり着いたシンの口から飛び出た言葉は、彼らの光となった。皆目を覚ましたと告げられた瞬間、栞は胸に手をあて、深い息を吐いた。


「よかった…」
「…ああ。英士も、結人も…無事だった…」
「うん…本当に、よかった…。空も、本当によかったね。お母さん、無事だって」
「うん…っ」


 安堵したように深い息を吐いた一馬に、涙を浮かべる空に、栞はようやく震えもおさまり、心から笑えた。


『あの大陸は錯覚なんかではありません!確かに存在しているのです!一体何が起こったのか全く分かりません。ただ、やがてこのままでは世界中の空はあの誰も見たことのない不気味な大陸に覆いつくされてしまうのでしょう!』


 シンが持っていた小型テレビから流れてくるキャスターの声に、子供たちはまたどよめきだった。


「どういうことなんだ。またヴァンデモンの仕業なのか!?」
「そんなことないよ!今度こそ確実にヴァンデモンは倒したんだから!」
「うん、間違いない!」


 反論するコロモンやツノモンは実際ベノムヴァンデモンと戦ったのだから、その言葉は正しいのだろう。だとしたら、この異様な光景は一体何のせいなのだ。
 栞はただ瞑想した。自分の記憶と胸の高鳴りに間違いがなければ、この大陸は。だがそれを引き起こしているものが何なのかは、皆目見当がつかない。


「ヴァンデモンは消エたヨ。証拠に、モう栞の足は腫れテなどいナい。だかラ、コレはヤツのせイじャなイというノは正しイと思ウ」


 じ、っとただ空を見つめていたイヴモンが、彼らを振り返り、そう告げた。彼の青い瞳が、ただ真っ直ぐ子供たちを射抜く。何かを危惧するような、恐れているようなまなざしだと感じた。


「ソウ、だから…これは…これは、きっと…」


 そうして、彼は再び口を噤んだ。これ以上洩らすのは禁忌と言わんばかりに、身体全体震わせる。栞が気遣わしげにその身体に触れれば、イヴモンは少し泣きそうな顔をして、それから笑った。


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