(…イヴモンの言葉。栞さんの目線。…ん?あの山は…。ムゲンマウンテンにそっくりだ…!でもそんなことって…)


 イヴモンの言葉にさらに混乱し頭を抱えた太一に、一人冷静に状況を判断しようと空を観察し続けた光子郎は、あることが引っかかった。それは自分と同じように空を見上げていた栞の視線。それは訝しげではなく、どこか懐かしいものを見るような、そんな優しいものも織り交ざっていた気がした。それに加え、自分の知識が、記憶の底から引っ張り出したある風景を、脳内に叩き込む。初めてあの場所で旅した時の最終地点。――似ている。あの山。とても。


「太一さん!ちょっと単眼鏡であそこを覗いてもらえませんか!?」
「え?…どこ?」
「ほら、あの山なんですけど…」


 光子郎はひとつの山を指さすが、単眼鏡の先にはいくつも同じような山が映し出される。光子郎の言う山を当てるのは至難の業だった。


「どれ?どの山だよ。たくさんあってわかんねえよ…」
「あそこです、ほら!」
「あそこっていわれても…」


 視点をさまざまに変えてみても、光子郎の言う山がどれかは分からない。いっそのこと光子郎にこれを渡してみるかと考えたとき、彼の目の中に横切る何かを見つけた。


「あっ!」
「どうしました?」
「飛行機だ!飛行機がいる!」
「えっ!?」


 太一の言葉に、子供たちは目を凝らして、空を凝視した。わずかにだが、赤い光が点、点と光っているのが分かった。ただあまりにも微弱のため、裸眼で確実に確認するのは難しかった。ただ確かに単眼鏡越しの太一の目にはうつっていた。ストライプ状の空の下を、ふらふらと危なげな操縦で飛ぶ一機の飛行機の姿が。あのままでは墜落してしまう!


「…ダメ、落ちてしまう!」
「そんなことさせないわ、…ピヨモン!」
「任せて、空!」


 赤い光に包まれたピヨモンは、力を振り絞り、進 化をした。不死鳥のごとく、翼を大いにはばたかせ、バードラモンは空を舞う。一直線に飛行機のもとへと飛び立つ彼女の瞳には、信じられないものがうつった。―真紅の体を持つ、クワガーモン。それが飛行機を抜き去ったとき、飛行機の羽がパキリと音を立てて凍り付いた。驚いている暇はなかった。バードラモンはさらに加速し、急いで機体を支える。だが彼女の体の数倍の大きさを持つ飛行機を支えることは不可能に近い。どんどんと重さに耐えきれず、バードラモンの体を下敷きに、飛行機は墜落していく。


「頑張って、バードラモン!!」
「お願い、バードラモン…!!」


 愛しいパートナーと己らの秩序の声が、バードラモンの脳内に響き渡った。空の胸元から淡い赤色の光が放たれる。それは、愛情の徴。空から満ち溢れた愛情が頂点に達し、データは勢いで書き換えられていく。


「バードラモン超進化ァ――ガルダモン!!」


 鳥人は強靭な体を駆使し、何とか墜落寸前の機体を押しとどめようと、力を込めた。だが一体で何とかできるほど機体は軽くはない。だとすれば、協力が必要だ。同じように空を飛べるデジモンはテントモンだけだった。
 「ワテも手伝いまっせ!」彼は急いでカブテリモンに進化をし、同じように空をはばたく。急ぎガルダモンのところまで行かなければ。だがその途中、彼も真紅の体を持つデジモンとすれ違い、あれを逃してはならないと電撃を放つも――確実に命中したはずだったというのに、その電撃はクワガーモンの体をすり抜けていった。


「なんやて…!?」
「ッ避けて、カブテリモン!触れてはダメ――!!」


 飛行機を支えることで手いっぱいだが、必死にガルダモンは叫んだ。彼女は一瞬にして理解したのだ。くるりと向きを変えて自分に突撃してきたクワガーモンを、カブテリモンは寸でのところで避けることができた。クワガーモンは追撃をしてくるわけでもなく、ただそのまま、真っ直ぐ飛んでいった。だが今はクワガーモンにかかっている暇はない。二体はそのまま協力をして無事飛行機を東京湾へと運ぶことができた。
 東京の人々は、その勇ましい二体の姿を、しっかりと目に焼き付けていた―。


17/08/06 訂正
15/05/05

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