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 アナウンスの音に空はゆっくりと目を開ける。もう、中野坂上にはついたのかしら――ぼんやりとした脳内で辺りを見回せば、つられたように、他の子供達も目を覚ます。「ここは…?」空の呟きに、丈は看板をさがした。どうせまだ中野坂上には着いてはいない――「新宿だって!?」その看板に書いてあったのは中野坂上なんかじゃなくて、とっくに目的地を過ぎた場所に存在する新宿だった。


「寝過ごした!!」


 子供たちは慌ててホームに飛び出た。


「えー!パタモン起きてたの!?」
「だって喋っちゃダメだって言ってたじゃない」


 熟睡してしまった自分たちに非があるのだ。誰を責めるわけにもいかない。
 栞は心の奥底を抉られるような気分がして、そっと視線を下にずらした。何が何でも起こすべきだったのだろうか。でも、自分には、まだ。
 そんな栞の変化には気づかず、丈は眉を寄せたままの状態で光子郎の方を向いた。ゴマモンは成長期のままなので、少しでも場所がおかしいと直ぐにずり落ちそうになる。


「中野坂上まで戻る?」
「いえ、確か新宿からでも丸ノ内線に乗り換えできるはずです」


 二人はそう言うと、丸ノ内線を探しに歩きだした。新宿駅はとても混雑しているし、色々な線が混じり合っているためよく分からない。しかし丈と光子郎は慣れているのか、すいすいと迷うことなく道を進んでいく。迷わないように、置いて行かれないように、意気消沈する気持ちに鞭打って足を進めた。
 その時、ぐぅ、と誰かのお腹が鳴った。


「ねぇ…太一ィ、おなかすいたぁ……」
「俺もォ…」
「あたしもぉ…」
「我慢しろよ。俺だって腹減ってるんだから」
「あたし、ハンバーガー食べたい…」


 ぽつり、とミミが呟いた。思い描くは、あのジューシーなハンバーグが挟まったパン。チーズもいい。あのトマトもいい。久しぶりの肉汁。
 その拙い想像力は、お腹のすいた彼等にしたら魅力的だった。足を止めたのは何もミミだけではなかった。


「ハンバーガーか…」
「なんか、随分食べてない気がするな…」


 こちらの日数に例えてみたら、最後にハンバーガーを食べた日からそんなに経っていないはずかもしれないというのに、彼等にしてみたらもう何年も有り付いていない。いわば御馳走の部類に入る。ごくりと誰かが生唾を飲み込んだ。――金なら、ある。
 一人、栞だけがイヴモンをぎゅっと抱きしめて、首を傾げていた。

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