空とタケルの間に座った栞は、いつもよりも縮こまっていた。空とミミは笑顔を浮かべているが―それもそのはず、不機嫌そうな表情などしたら運転手に追い出されてしまうかもしれないからだ―自分にはそんな芸当とてもじゃないけれど真似できない。俯いて、始終、イヴモンの白い体を見つめていた。


「後ろの席の僕たちー」
「…あ、はい」
「お前ら、空ちゃんとミミちゃんと、それから栞ちゃんのおまけなんだからな。分かってんだろうな」
「…はーい、僕たちおまけでーす」
「おまけは静かにしてんだぞ。じゃねえと、高速だろうがどこだろうが放りだすからな」
「はーい、静かにしてまーす…」


 ガングロに金髪、左耳には二つのピアス。いかにも今時体なお兄さんは、白い歯をむき出しにして嫌らしく笑った。どうやら、女子が目当てのようだった。女の子たちにはとても紳士的な態度を向けてくるのだが、男子には手厳しい。しかし乗せてくれるという以上、下手な真似ができるわけもない。素直にかつ静かにを決め込んだ。


「飴舐める?ミミちゃん」
「あっ、ありがとうございまーす!」
「空ちゃんと栞ちゃんも!」
「あ、ありがとうございます!」
「…あ、りがとう、ございます」


 やはり女子には優しかった。空は受け取った飴を、不思議そうに見つめてくるピョコモンの口にそっと運んであげた。栞も、イヴモンを見つめ、首を傾げる。―食べる?視線だけで投げかければ、嬉しそうににこりと笑ったので、その口にイチゴ味の飴を入れてあげた。


「なんだよこいつ、あったまくんな……」
「しょうがないでしょう、お台場まで乗せていってくれるっていうんだもの」
「…本当にお台場まで行くんだろうな、この車」


 こそこそと話をする子供たちに気付かず、お兄さんは少々荒っぽい運転を続けた。
 それは音楽性にも表れた。お兄さんは運転がヒートアップしていくのにつれて、段々とラジオのボリュームをあげていった。知っているとか知っていないとか、好きとか嫌いとかを抜きにしても、このような大音量で聞いていたら耳を悪くするし、第一不快感以外の何ものでもない。
 「あ、あの!お兄さん!」我慢の限界に到達したミミがお兄さんに訴えかけるが、ノリノリの彼には通用しない。

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