「俺の愛車にクソしやがったのは誰だーっ!?」
「…ごめん、俺――」
「わ、わたし!わたしがしたの!」


 コロモンのしでかしたことは、パートナーである自分が責任を取らなければならない。太一が意を決して挙手しかけたのは、阻まれた。慌てて割り入った空によってだった。誰もがポカーンとした。子供たちはすぐに空ならば上手くまとめてくれるだろうと思ったが、お兄さんは首を横に振って、信じられないと目を見開いた。しかし空は愛らしく胸の前で手を組んで、にっこりと笑った。


「ごめんなさい、直ぐに綺麗にするから!」
「うっ、嘘だーっ!空ちゃんがそんなことするはずないだろう!?」


 そして直ぐに辺りをきょろきょろし、その視線は丈を射とめた。


「後ろにいたのは…お前か!?」
「え!?」
「大人しそうな顔しやがって、コノヤロウ!!」


 お兄さんは、丈との間を一気に詰め寄ると、彼の胸倉をつかみ上げた。
 栞はぎゅっと目を瞑った。恐怖心が胸を支配する、思わず近くにいた太一に寄った。もちろん彼はそんな行動に気付きもせず、慌てて丈と運転手の間に割って入ろうとするも、奈何せん、距離がある。「や、やめてください!!」一番近くにいたのは光子郎だった。彼が急いで止めに入ろうと歩み寄り、その腕を掴んだが――何分、運転手は頭に血が上っていた。「離せッ!」どん、と、光子郎の小さな体は突き飛ばされる。「うわぁ!!」力があり余った男性の力は、おそらく太一やヤマトでも踏みとどまることはできないだろう。ましてや光子郎は小柄だった。突き飛ばされた勢いのまま、光子郎の体は後ろへと向かって行き、地面から、足を離した――誰かが伸ばそうとした手は、すり抜けた。


「光子郎はん!!」


 名を、呼ぶ。
 それは、光を求めていた。


「――光子郎くん…ッ!!」


 名を、呼ぶ。
 それは、光を、与えていた――。


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