パッと、世界に光が降り立ち、それは一身にモチモンへと注がれる。デジヴァイスが光を呼び、モチモンのデータはその光によって書きかえられていく。そこは、静寂なる空間であった。「モチモン進化ァ!――テントモン!!」
テントモンは急いで、両腕を駆使して、光子郎の右足を掴んだ。間一髪のところで光子郎の体は受け止められる。お兄さんは、急に動き始め、姿をかえたぬいぐるみに言葉も出ない様子だったが、子供たちは、ほ、と誰もが息をついた。

 それもつかの間。

 ざぶんっ、という波の音に目を見張る。「っあそこ!」栞が指を差した。濁りを帯びた水の中から、突如、ゆっくりと白い何かが顔を出した。


「あれは!?」
「ゲソモンや!」
「ゲソモン!?」

「う、うわぁああ!!イカのバケモンだァァァ!!」


 誰よりも早く、お兄さんは一目散に逃げ出して行った。もはや車内に放置されたままの異物など、お構いなしだった。それよりも早く、この場所から逃げなくては!子供たちのこともすっかり頭から抜け落ち、少し離れた場所で腰を抜かせていた。
が、逆に、それは子供たちにとっては好都合だった。丈の足もとからするりとぬけだしたゴマモンがぴょんぴょん跳ねながら河の中へと身を投じる。「海のデジモンならオイラに任せて!」その願いを受け止め、光を与える。


「ゴマモン進化ァ!―イッカクモン!!」


 体の大きなイッカクモンは、同じサイズのゲソモンと対峙する。イッカクモンはすぐさまゲソモンの体に突進した。イッカクモンほどの重量級のデジモンに突進されれば、よろめくのも道理である。ふらついたゲソモンに最後の一発と、「ハープーンバルカン!!」彼の得意技を放った。しかしそれはゲソモンの体を掠め、彼方に消えて行った。
 あまりの大きさに、騒ぎを聞きつけた野次馬たちが、目を見開いて、その様子を見ていた。「よく出来てんなぁ」「え、本物じゃねえのか?」―先ほどの電車の中での出来事が思い返される。あの時は幼年期だったからぬいぐるみで誤魔化せた。腹話術で誤魔化せた。しかし、こうもバトルをしているところを見られてしまえば何の誤魔化しもきかないだろう。


「今のうちに下に向かおう!」


 丈の提案で、全員が階段を使ってイッカクモンのもとまで急いだ。その間に、取っ組み合いを続けるイッカクモンとゲソモンだったが――何とかイッカクモンが勝利をおさめ、ゲソモンを海に沈めていた。急に消えた二匹に、民衆からは戸惑いの声があがる。のろのろ、と立ち上がったお兄さんは、川が見える場所まで向かい、ハッとして振り返る。「そういえば……アイツらは?」
 一方、子供たちはイッカクモンの背に乗って河を渡っていた。これ以上騒ぎに巻き込まれるわけにはいかない。しかし全員がイッカクモンの背には乗れなかったので、仕方なしに、丈以外の男子はイッカクモンに牽いてもらっているマルタの上に乗っかっていた。


「なんか大騒ぎになっちまったな……」
「しょうがねえだろ。ま、なんとかなるさ」

「お台場に向けて、しゅっぱーつ!!」


 そして、なんとかお台場に帰りつこうと、イッカクモンは泳ぎつづけた。その背中を、一筋の鋭い視線が突き刺さっていたことには、気づかなかった。


17/07/27 訂正
11/10/10

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