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「いいか?他の人間の前じゃ、絶対に喋るんじゃないぞ!?」
「もう何回も聞いたよ、太一!」
「分かってるってー!」
「ぬいぐるみのふりをしていればいいんだよねー?」


 何度言い聞かせてもデジモンたちは興奮を覚えると直ぐに口を開きたくなる。耳にタコが出来るくらい言い聞かせ、子供たちは駐車場までやってきた。一人一人の心が躍る。あの長き冒険の終着点であった『日本』という場所の土を、今まさに踏みしめているのだ。草むらから覗きこんだ太一は「うおー!」と思わず声をあげた。彼は一度戻ってきているのだが、この光景は声が漏れるほど懐かしいものだった。


「うわぁ太一ィ!子供がいっぱいい、」
「だから喋るな!!」
「でもぉ、あんなに子供たちがいるんだもん!」
「人間の子供ってあんなにいたの!?」


 大きな目を更に見開くピヨモンに、空は腰に手をあてたまま、遠くを見つめた。


「これくらいで驚いてもらっちゃ困るわ。世界中にはこの何万倍、いいえ、何百万倍もの子供がいるんだもの」
「え、えええ!?な、何百万人もの、空!?」
「私は一人!!」


 何を想像したのか、ピヨモンは目を丸くさせながら空を見上げた。この何百倍の空がここにいたとしたら、世界中空だらけになってしまう。栞はその光景を思い浮かべ、思わず笑みを零した。


「ちょっと栞!他人事だと思って笑わないで!」
「だ、だって…空がいっぱいだと思ったら…」
「もう!」


 ぷん、とそっぽを向く空に、栞は更に笑みを零した。


「あーっ!」


 その時、キラキラと目を輝かせていたミミが、パルモンの体を押しのけ、走り出した。「みっちゃーん!!会いたかったー!!」じんわりと涙を浮かばせながら、何カ月ぶりかの再会果たす――のはミミだけであるから、とうのみっちゃんは首をこてんを傾げた。彼女からしてみたらさっきぶりなのである。「どうしたの?」「たーこ!元気してた!?」ぎゅうっと、たーこを抱きしめる。二人の頭にはハテナが浮かび上がっていた。


「ったく、こっちじゃ時間が経っていないってあれほど言ったのに」
「気持ちは分かりますよ。でも…」


 ため息を零した太一は、デジモンたちに言い聞かせるよりミミに言い聞かせた方がよかったと少しだけ後悔していた。苦笑をした光子郎は、それよりも、と表情を硬くさせる。


「早く光が丘に行かないと」
「…日中は、たぶん、ヴァンデモンは動けないと思うから…夜中から活発に動き出すと思う」
「だな。…よーし」


 栞の言葉に頷いた太一は、にっと笑って、バスの運転手と予定について話をしていた藤山のもとへと駆けて行った。「せんせー!」元気よく声をかければ、二人揃って振り返る。

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