「いい加減あキないネ、お前も」
「負け惜しみか?そんな姿じゃ、何もできないもんな!」
「お前如きニそんナこと言うハずなイだロ」
「ふん!何もできないお前が偉そうなことを言うな!」
「ふウん?じゃアお前は『何』か出来るんダ?」


 挑発にもとれる口調で喋るイヴモンに、栞はハラハラした。いくらピコデビモンと言えど、こちらは進化できないイヴモンと、子供二人。物理的に守ってくれるパートナーデジモンは、レアモンと対峙中だ。彼の放つピコダーツは、威力は小さなものかもしれないが、毒性が強い。刺さったら、苦しむに堪えないことになるだろう。


「くそぉ!言わせておけば! ピコダーツ!」
「うわっ!」
「あっ、!」


 真っ直ぐ放たれたピコダーツは、栞と光子郎の間、倉庫の壁に三本きっちりと刺さっていた。間一髪でのがれたと言っても過言ではない。ピコデビモンは、もはやストップをかけても聞くような体勢ではない。少しだけ恨めしげにイヴモンを見ても、彼はしれっとしている。「次で仕留めてやる!」そう高らかに言い放ち、ピコデビモンは羽を広げ――「光子郎はん!!」低い声が、彼らの耳に届いた。下から迫上がって来るのは、大きな体をしたカブテリモンだった。


「なに!?」


 いくらなんでも分が悪いと踏んだのか、ピコデビモンは悔しそうに顔を歪めると、「くそっ、運が良いヤツだな!次こそは守人をもらっていってやるからな!」と言い放ち、どこかへと立ち去っていった。その背中はまさしく敗者の背中だった。


「ありがとう、カブテリモン!」
「ありがとう。お疲れ様」


 二人にお礼を言われたカブテリモンは、照れたように笑い、それからテントモンに姿を戻した。


「光子郎はん、八人目は――」
「うん、帰りながら説明するよ。どこかでタクシー拾って、」
「タクシーで来たの?」
「え、あ、はい。急いでいたものですから…」
「…じゃあ、…頑張っておじさんに頼むから、乗っていって?」
「え、でも…」
「いや、かな」


 そんな寂しそうに言われては、嫌など言えるはずもない。そもそも、タクシーを使うとお金がかかってしまうから、乗せてもらえるなら願ってもない話しなのだが。「迷惑じゃないですか?」恐縮だと言わんばかりな光子郎に、栞は首を横に振った。「大丈夫だよ。行こう?」―栞としては、光子郎を連れていれば、芝浦に行きたいと言った証人になるから、彼女にしてもありがたい話だった。


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