「おはよう、ミミちゃん」「おはようございまーす」もはや一日分のエネルギーを消費しきったミミは、早いところ日陰で涼みたかった。それを察したのか、空が苦笑を浮かべながら、木々が生い茂るところへと促し、子供たちは丸くなって座り込んだ。栞は子供たちを順に見まわし、少しの違和感を覚え、首を傾げた。


「なんか…すごい騒ぎになってるわね」
「テレビでも朝からこのニュースばっかりだからな…」
「…でも変なんだよなぁ」


 考え込むように下を向いていた太一が、不意に空を見上げたので、栞はそちらへと視線を向けた。「何が?」とアグモンが問いかけた。
 「前に俺とアグモン、栞とイヴモンがこっちに帰ってきた時も、デジモンは現れた」ごろりと仰向けに寝転がり、木々から漏れ出す光を一身に浴びる。「でも、それは俺達とヒカリにしか見えなかった。それが今度はたくさんの人に目撃されて、これだけのニュースになってる」蝉の声が、やけにミーンミンと耳にまとわりついた。
 そうだったのかといわんばかりに、子供たちは口を開けて目を見開いた。光子郎は一つ呼吸を置いて、栞の方へと視線をやる。向けられた視線に、栞は目を瞬かせた。


「ヴァンデモンのゲートを通ってきたからでしょうか」
「僕ハ、光子郎の意見の通りダと思うナ」


 暑さにぐったりしていたイヴモンが、栞の腕の中からぴょこんと跳ね上がった。「あノゲートは、たブん、守人の力が眠っテル。でもナけレバ、世界が繋がルわケないモノ。だカらアイツらハ力を増しタ。守人の力ヲ得テ。だカら、色んな人に見エるよウになっチャったンだヨ」饒舌に喋り、再び栞の腕の中へと潜り込む。半袖の彼女は、腕は曝け出されているので、白い毛が肌にあたり、何ともむず痒かった。


「…そういうことか。ということは、だ。もし、あのゲートを通って沢山のデジモンたちが押し寄せてきたら…」
「大変、だね…」


 タケルの顔が強張り、ぎゅう、と力強くパタモンを抱きしめた。彼の、否、彼らの脳内に思い浮かんだのは、様々な犠牲や葛藤、苦難を乗り越えて、ようやく倒してきたデジモンたちの姿だった。


「そんな…っ」
「十分あり得る話です」
「だから、そうさせないためにも、一刻も早く八人目を探しだしてデジモン世界を救うんだ!」


 ガっと起き上がった太一の瞳は、いつになく、勇気に溢れていた。―不思議だ。彼がそういうと、何だか、出来るような気さえしてくる。「…うん!」空が大きく頷いた。「やりましょう!」光子郎が大きく答えた。「頑張る、」栞が小さく呟いた。小さなものでも、大きな決意だった。

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