「お〜い〜」
一致団結し、これから、そういう時に、何だかこの場にそぐわない、間の抜けた声が通り抜けた。栞は目を瞬かせ、辺りを見回し、ようやく違和感に気付いた。
―先ほどから、確かに、いないと思えば。
「いや〜…中々昔の名簿が見つからなくて〜…!」
「緊張感のねえやつ」
いつになく呆れたように太一が呟いた。そんなミミと光子郎の間にするりと入り、丈は座り込んだ。
「八人目はおそらく、僕たちと同じように光が丘で起こったデジモン事件を目撃しているはずです。さらに肝心なのは、昨夜、芝浦付近にいたということです」
「じゃあ、今は芝浦に住んでいるの?」
「俺たちみたいに引っ越したのかもしれない」
「ですから、今日は手分けして芝浦付近を探してみようと思うんです」
「いいわよ。…暑いけど…」
的を得た発言に、子供達は頷いた。ぼそっと呟いたミミの本音には、心の中で賛同しておくとしよう。今日は、いつになく、暑い日だった。
「で、これはどうするの?名簿」
「その中に八人目がいる可能性が高いんです。電話して、昨夜芝浦にいた人がいないか確認してください」
それは―たとえ名簿を持っていたとしても、遠慮したい作業だと思った。もちろん、名簿を引越しの際に紛失してしまったらしい栞は、電話をかける事は出来ないから、杞憂なのだが。
そろーっと、丈が手をあげた。
「僕は明日から夏期講習なんだ。電話の方はちゃんとやっておくから、芝浦まで行くのは遠慮させてくれ」
「ええ!?」
「きったねー!!」
「仕方ないだろう受験生なんだから…」
目をあちらこちらに泳がせて、額には汗を浮かべる。言い逃れをしようとしているようだった。「うえ!?」そんな丈の手に、ミミは笑顔で名簿を乗せた。
「じゃああたしの分もやっておいて?若葉幼稚園の名簿」
「それは良い考えだな。第四小学校の名簿だ、頼んだぜ!」
「こういうことは一人が集中的にやった方がいいかもしれませんね」
「確かに。そうかもね!よろしくね、先輩!…栞、行きましょ」
「は、ははは…。え、と、丈さん。頑張って、ください」
栞が最後の希望と言わんばかりにこちらを見つめられたが、手伝える気がしない。何分、彼女の人見知りさといったら折り紙つきだった。曖昧な笑顔を浮かべ、空のあとをちょこちょことついていってしまった栞を見送って、丈はがっくしと肩を落とす。そんな彼の前に、太一が笑顔で現れた。
「まさか太一、君も!?」
「安心しなって。俺は人に仕事を押し付けるようなことはしない」
「き、君ってやつは、何て良いヤツなんだ!!」
「へへ、それほどでも…」
そんなやり取りを背後で聞いていた空は振り返り、呆れた表情を浮かべた。「単に名簿持って来なかっただけでしょ?」「そうなんですけどね…」光子郎は小さく苦笑を浮かべた。
17/07/27 訂正
11/11/25
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