八人目を探す手段は、このデジヴァイスだけが頼りだった。住宅街をくだり、並木道に出たところでベビーカーを押す人を変えようと、空とミミがバトンタッチした。空はデジヴァイスを見ながら、先に進む。そのちょっと後ろをベビーカーを押すミミが、さらに最後尾を少し遅めに栞が歩く。ようやく平坦な道にはいったためか、少しだけ、足の痛みも和らいだ。


「せっかく帰ってきたのに、なんでこんなことしなきゃならないのよ…」


 せっせと歩を進めていたミミの足が、ぴたりと止まる。思わず自分の口から漏れた愚痴に対し、納得してしまったのかもしれない。「空さぁん」と少し甘えた口調で名を呼べば、先を歩いていた空が振り返り、首をかしげる。


「少し休みましょうよう」
「また?全くしょうがないわね…」


 その表情は正に仕方がないと言いたげだったが、肯定の意味を用いて出された言葉に、ミミは大喜びだった。この調子でいけば、もっとスムーズに探索ができるのではないかというほど、日陰へ向かうスピードは早いものだった。


「夕べはふかふかのベッドにクーラーの効いたお部屋、やっぱりおうちが一番だって実感したわ…」
「お料理も美味しかったし!」
「そうそう!ママのお料理をあんなにおいしいって思ったの、初めてだったわ!」


 木々が生い茂り、ちょうど日陰になっているベンチに座り込んだミミとパルモンが嬉しそうに言うのを聞いて、少しだけ笑みが漏れた。―離れてみればよくわかる。それが、何よりも大切なものだということに。


「空のお家の料理もおいしかったわ!空のお母さんってとっても優しそうだったし!ね?空」
「そう?ありがとう」


 一瞬だけ地図から顔を離し、笑顔を浮かべた。


「栞のオバさんノ料理もおイしかッたヨ?」
「おばさん、料理上手だから…ね」


 おばが用意してくれたハンカチで、頬を伝った汗を拭う。痛みは先ほどよりもずいぶん引いてきてはいるが、それでも平常通りとはいかないらしい。曖昧に笑ったのに気づいたのか、イヴモンは空色の瞳で見透かすように栞を見たけれど、それより早くに彼女が視線をはずした。目が合うことはなく、それきりイヴモンが何かをいうことはなかった。

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