「守人、私のお願いを聞いてくれますか」


 もう一歩、栞が踏み出したところで、ウィザーモンの声が響いた。思わずその場に留まれば、イヴモンは慌てて栞とウィザーモンの間に立つ。


「栞ッ!聞いチャダメだヨ!」


 イヴモンは自分を少しでも害のあるものから守ろうと必死だった。その思いが分かるからこそ、栞は戸惑ったように彼を見た。蒼色の瞳は、栞が傷つくことを恐れている。物理的に守ることができないから、自分の出来る範囲で、害のあるものを遠ざけようと。
 ウィザーモンが悪い者ではないことは、何となく分かった。でも、イヴモンの気持ちを蔑にするわけにはいかなかった。彼には幾度となく守られてきた。そんな自分が、彼の想いを踏みにじるわけにはいかない。


「…ごめん、なさい。あなたが、悪いデジモンじゃないって分かるけど――ごめんなさい、」


 これ以上、ウィザーモンの顔を見ることができない。栞は今さらながら裸足であったことを思い出し、家の中に帰ろうとした――その背中に、ウィザーモンは、言葉を投げかけた。


「聞いてくれるのならば、私の知っている限りの――…八人目のことを――教えます」


 思わず立ち止まった。「栞、」イヴモンが咎めるように自分の名を呼んだけれど、それ以上に、ウィザーモンの言葉が響き渡る。


「八人目のこと、知ってるの…!?」
「…具体的な事ではありませんが――コレを」


 そう言って、彼は懐から、一つのデジヴァイスを取り出した。栞の心が、反応する。―それは確かに、八個目のデジヴァイスだった。


「どうして、それを…!?」
「八人目を探していた時―有明の森のカラスの巣で見つけたのです」
「八人目が持っていたわけでは、ないの?」
「はい」
「…そ、っか」


 八人目が分かると思ったが、そういうわけではないようだ。手掛かりと言えば、確かに重要な手掛かりなのだが。


「それ…ヴァンデモンに渡さなくていいのかい?」


 夏の夜にはちょうどいいくらいの、冷え切った声が、住宅街に響き渡った。シンとした静けさの中に、少しばかり高い少年の声は溶け込んでいく。ウィザーモンはデジヴァイスを見つめ、首を縦にふった。

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