「それが――証、じゃないかな」
「誰だ!?」
思わぬ声に、テイルモンは一歩飛びずさって、威嚇する猫のように毛を逆なでる。その声が、暖かいものだと、知っているにも関わらず――分からなかったのだ。
「あなたは待っていたんだよね」
―――…この世界を守る為に。
「探していたんだよね」
―――…無力で、何も出来ない私の代わりに。
「だったら、それが、答えだよ」
―――…どうか、いずれ来たる彼等とともに。
ふわりと、夜風に漆黒の世界が散らばった。テイルモンは、思わず目を見開いた。その声に交じって、背後に、少しばかり大人びた暖かい声が聞こえた。―その声も、テイルモンは、知っていた。懐かしく、暖かい。
「守、人――」
私は、彼女を、知っている――不意に、ミャーという猫の声が届き、テイルモンは弾かれたように、向かいのマンションの方を向いた。愛おしげに見つめる視線の先には、幼い少女がいた。
栞の意識は不意に己のほうへと戻り、同じように幼い少女に視線を向けた。
「あれは――」
―――…ヒカリッ!!
「八神くんの、妹さん、?」
活発そうな眼もとが、少しだけ彼に似ている気がすると思っていた。だからか、どことなく惹かれるものがあるのかもしれないと。彼女はベランダに出て、戻ってきた飼い猫を抱きしめた。
「――っ、」
「栞、」
「…うん」
散らばった星のかけらが、直ぐに、繋ぎ合わさる。こんな問題、算数よりよほど簡単だということを、彼女の持つ清らかな『光』が、教えてくれていた。自分にはないものを持つ人だからこそ、惹かれてやまない。彼女の兄と同様に。
イヴモンに名を呼ばれ、確信を持って頷く。彼の鋭い眼光は依然とウィザーモンを見据えていたが、栞の確信に間違いなどない。ふぅ、と小さなため息をついて、栞の腕の中に飛び込んだ。
栞がウィザーモンの方を向けば、彼は首を縦にふってくれた。彼女の意思を読み取ったのだろう。彼は栞の体を、軽々と持ち上げ、テイルモンへと向き直る。
「確かめてきます」
「っおい!?」
舞い上がるウィザーモンが目的地――八神家のベランダへと向かっていくのを止めようと駆け出したテイルモンだったが、少女の姿を目に止めると、ぴたっと動きを停止してしまった。――守人を目にして、心の奥底から湧き上がる感情を抑えられなくなったのは確かだ。そして、その終着点は、きっとあの少女へとたどり着く。( ヒカリ… )きっと、最初から、テイルモンはその名を知っていたのかもしれない。( おかしいな。なぜ、名を―― )手摺を力いっぱい握り、己の脚力を活かしてウィザーモンと栞のあとを追った。
back next
ALICE+