「八神くん、落ち着いて、!」
「太一、彼らハ敵じャなイヨ」
なぜ、二人までコイツらを庇うのかが解らない。本来守人とはデジモンに対しては非常になれないものだとしたら、甘えゆえにそうせざるを得ないのかもしれない。イヴモンは栞の言うことに逆らうことはあまりしない。だとしたらもっと許せない。栞の優しさに付け込んで危険な目に合わせようとしているのだ――ヒカリのことで、完全に頭に血がのぼった太一には、どんな言葉も無意味なようである。
「ベビーフレイム!!」
アグモンの大きな口から放たれた炎の塊は、もちろん、『敵』目掛けて飛んでいくはずだった。しかし、それは的を外したのか、思わぬところ――ヒカリへとまっすぐ飛んでいく。
「ヒカリッ!!」
「ヒカリちゃんっ、!」
栞が一歩前出した時、目の前を白い猫が飛び出ていく。それはヒカリの体を突き飛ばし、自らが炎の塊―アグモンのベビーフレイムを一身に受けた。いくら成熟期とはいえ、構えてもいないテイルモンは、もちろんベビーフレイムの火力に耐え切れず、吹き飛ばされ、塀に叩きつけられて地面に落ちた。「テイルモンッ!!!」ヒカリの絶叫が、無情なほど、響き渡った。――『敵』であるはずのテイルモンが、ヒカリを庇ったのは見てわかった。
「テイルモンっ」
「ヒカリ、大丈夫…。このくらい何ともない…」
さすがは成熟期といったところか、多少の痛みはあるものの、言葉通り、大したことはなさそうだ。駆け寄るヒカリに、優しい笑みを浮かべた。今までのテイルモンであったなら、考えられないくらい、暖かいものだった。「テイルモンが…ヒカリを庇った…?」思わず呆然と呟く太一は、信じられないものを見ている気分だった。あの時、確かに彼女は自分たちを邪魔したヴァンデモンの手下だというのに、一体何がどうなっているというのだろう。
その答えを提言するがごとく、ウィザーモンは、静かにテイルモンの横に立った。
「取り戻しましたか、閉ざされた記憶を…」
「ああ。『あの人』に言われた通り、私は九人目の選ばれし子供を待っていた――ヒカリ、私はヒカリを待っていたんだ」
「私を、待っていた?」
「ずーっと、ずーっと探していたんだ、ヒカリを…」
テイルモンは、喜びを隠しきれず、ヒカリの小さな体に抱きついた。何のことだかいまいちヒカリにはわからなかったけれど、それでも心に落ちた暖かい気持ちに嘘はない。パッと、ヒカリは、太一を振り向いた。
「お兄ちゃん!テイルモンはヒカリのデジモンなんだよ!」
「テイルモンが、ヒカリのデジモン!?」
「そうです。ヒカリが八人目の選ばれし子供」
「本当、なのか…?」
「――うん、間違いない。デジヴァイスが、それを証明しているから」
太一の視線を受け、少しだけ気まずそうに栞は呟いた。八人目が見つかって嬉しい反面、それが太一の妹だとして、彼女は危険な目に遭ってしまうかもしれないと思うと、心が少し痛い。
「そして、私がそのデジモン。ヒカリのことは、必ず守ります!」
テイルモンは、しっかりと自分よりも遥かに背のある太一を見上げ、宣言した。―初めて出会った時から、どうしてもヒカリには手出しできなかった。その理由が、ようやく、見つけられた。だからだろうか。太一には、テイルモンが嘘を言っているように見えなくて、小さく頷いた。
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