「栞をヴァンデモンのところに連れてくわけにはいかない」
「でも!」
「太一ノ言う通りダ、栞。僕たチの出番じゃナイ」
「っ、」


 蒼い瞳は真っ直ぐ栞だけを射抜いていた。だからこそ、もう何も言う事ができなくて、うなだれる。


「送っていけなくて悪い、」
「…ううん。絶対、無理、しないで。それから、テイルモンと、ウィザーモンを、まもって」
「当たり前だろ!」
「お願い、八神くん」
「ああ!――とりあえず途中まで、一緒に行こう」


 腕を掴む手に、少しだけ力を込めれば、太一はいつものように笑った。月光が彼等の姿を照らし出す時刻だというのに、彼の笑顔が太陽のように明るくて、思わず時間帯を疑った。
 太一の足が部屋の中に踏みいれられたので、栞も同じように続こうとして、部屋の中に入る前に靴を脱いだ。


「待って、ヒカリも行く!」
「ヒカリは危ないから、家に残ってろ!」


 それは栞の時とは違い、有無を言わさぬ厳しい口調だった。八人目を連れていけば、何をされるか分かったものじゃない。なんてそんなのは言い訳だ。ただ妹を危険な目に合わせたくない。
 「行くぞ!」と声をかけられ、太一が走っていく後姿を見て、もう一度振り返る。ヒカリは行き場を失った足を再び外の方に向け、稲妻が未だに鳴りやまない方向へと視線を向けていた。「テイルモン…」先ほど知り合ったばかりの、大切なパートナーの名を呼びながら。
 栞は人の家だというのに、特に戸惑うこともなく玄関まで向かった。ちょうど家の人は自室にいるのか、栞は太一の母や父に会う事なく、マンションを抜けることができた。


「じゃあ俺はこっちに行く。栞、間違ってもこっちにくるんじゃないぞ!」
「―…うん、分かってる。アグモン、お願い」
「うん!大丈夫、僕がちゃんと守るから!」
「じゃあ、またな!」
「気を付けて、!」


 走り去る背中を、見守ることしか出来ぬ我が身を、情けなく思う。ぎゅ、とペンダントを握りしめた。―私が守人だと言うのなら、どうか、彼等を守るだけの力をください。それは、彼女には気づかないほどの小さな光となって、太一たちの後を追って行った。


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