「あっちは…」
「ビックサイト、がある方角、か」
「ビックサイトって言ったら…近くに一馬たちの練習場があるじゃない!」
「…もう捕まってしまった可能性は高い、な」
「そんな!」
「だったら尚更、」
ぎゅ、とペンダントを握り締める拳に力を込めれば、再び明るい光が目の前で散った。
「はやく、助けなきゃ…」いつになく凛とした輝きを持った栞に、おじもおばも大きく頷いた。
「車に。大急ぎで行こう」
「…一馬、どうか無事でいて…」
わが子の身を案じるおばがどれだけ辛い思いをしているか、おじが苦しい思いをしているか。捕まっているかどうかすら分からない先の見えない状況だからこそ、余計に胸が締め付けられる。
「栞…。自分を囮に、ナンテ考えちャダメだヨ」
「…分かってるよ」
「ナら、いいンだけドさ。君はホラ、無茶したガるカラ」
「大丈夫、だよ。きっとみんな、いてくれてるから」
移り変わる景色は見えないが、確かに運転している者の視界の邪魔になるモヤはない。これが―ペンダントの力だった。
橋にかかった時だった。ピコン、ピコン、と今まで静かに栞の腰に落ち着いていたデジヴァイスが反応を示した。急いでデジヴァイスを見つめれば、自分以外に赤い点が、ふたつ。同じデジヴァイスを持つもの―もちろん栞の仲間である選ばれし子供のうちの誰かだ。
「見えない…」
目を凝らして窓の外を見てみるも、霧が邪魔をして視界がきかない。そうしている間に、赤い点は遠ざかり、いつしか音すらも消えた。「みんな―渦の中心に向かってる、んだ」ぐ、と手のひらを握り締めれば、脳内には、仲間たちの顔が浮かんだ。
「みんなが…一緒だもん」
「僕モ、一緒だヨ」
「イヴモン…。うん、そうだね」
擦り寄ってくる大切なパートナーを抱きしめ、小さな笑みを浮かべた。
――その時だった。深い悲しみが、胸の中に響き渡る。まるで落とされた水滴のように、波紋を広げる。
「ミミ、ちゃん…?」
純真の心を持つ少女が、ふと頭に浮かんだ。あの優しい少女が、悲痛な思いを抱いて、暖かな涙をこぼす姿が、目の前でチカチカ光る。
「ミミちゃん――」
傍にいられなくったって、心はつながっている。無意識のうちに指を組めば、願いの上限値が一気に上昇していく気がした。「大丈夫…」唇から漏れた言葉は、この場にいる人たちには届かなかった。
しかし、その言葉はつながる心を通じて、彼女にちゃんと届いた。その言葉は、どこか光を秘めていて、どこか暖かかった。
17/07/31 訂正
12/05/19
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