「ここ!ここでよくお菓子やジュースを買ったんだよなぁ」


 光が丘探索と言えば、方法は練り歩くことしかない。歩くことはデジタルワールドで慣れていたので、特に問題はなかった。むしろ、懐かしい風景を目の前に、子供たちは感極まるばかりだったから、デジモンたちも嬉しくなった。一様に懐かしげに、目の前のコンビニを見つめ呟いた台詞に、「あたしも来た事ある!」ミミも瞳を輝かせた。今だけは、八人目のことも、ヴァンデモンのことも、忘れていた。


「栞も、ここラヘんデ遊んだ?」


 ヤマトとタケルの会話を耳にしていたら、ふ、とイヴモンが問いかけてきた。栞は目を瞬かせてから、小さく頷いた。


「じゃア、栞にとっテも、トてモ懐かシい場所なンだネ」
「――、…そうだね」


 確かに懐かしいといえば懐かしい。父が亡くなるまでは、とても健やかに育っていたのだから。―それからのことは、あまり、思い出したくないのだけれど。他の子供たちとは違い、あまり嬉しそうな顔をしない栞に、イヴモンは、少しだけ寂しそうに眉尻をさげた。


「ゴめン、なンか変なこト、聞いチャったネ…」
「う、ううん。大丈夫だよ。――そう、だね。…うん。お兄ちゃんといっぱい、遊んだよ」


 ペンダントを握りしめ、慌てて小さく笑う栞に、イヴモンもやがて笑みを浮かべる。その際、「ゴメンネ」と小さな声で呟いたが、風の音に紛れ込み、栞の耳に届く事はなかった。彼女の視線は既に空の方へと向けられていて、イヴモンを抱きしめると、そちらの方へと向かって行った。


「光子郎くんは、どれくらい光が丘に住んでいたの?」


 ちょうど、空が光子郎に訪ねている時だったので、栞は空の横にひっそりと立った。ガードレールに寄り掛かった空は、同じように寄りかかっていた光子郎の方へと視線を投げかけると、彼は質問の答えを探すように、少しだけ左上へと視線を動かした。


「確か…一年もいなかったと思いますよ。ほんの数カ月かなぁ…」
「短いな。どうしてだ?」
「さぁ…」


 首を傾げながら、ガードレールから身を離す。当時は幼稚園だった光子郎が、大人の事情など知る由もない。だが太一は納得していない様子で、眉を寄せた。


「その質問には僕が代わって答えよう!」


 身を乗り出した丈は、その際にずれた眼鏡を直しながら、少しだけ胸を張った。「丈先輩が?」空は訝しげに、彼に視線を寄せた。

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