「でもその時は、光子郎とは知り合いでも何でもなかったんだろ?」
「知り合いじゃなくったって見当はつくよ。――ずばり、光子郎一家が引っ越した理由は、爆弾テロだ!」
「爆弾!」
――…爆弾、テロ?
小さく震えた唇からは、声なき声が漏れだす。
( そんなの…あった…? )
彼等の話によると、その爆弾テロは4年前に光が丘で起こったという。その当時は栞もまだ光が丘に在住していたため、大々的なものであったのならば覚えているはずだ。しかも爆弾テロなんて衝撃的なものなら尚更。―子供たちが口ぐちに「覚えてる」だの何だの言っているのに対し、栞はこれっぽっちも記憶にない。戸惑ったように俯いて、何とかその場をやり過ごす。自分だって光が丘に住んでいた。ヤマトだってそれを証明していた。――しかし己にのみ、欠落している記憶がある。
その当時、4年前といえば1年生。ちょうど父が亡くなった年で、意地悪なおじ夫婦に預けられた年でもあり、すぐに真田家へ預けられた年でもある。めまぐるしく変わる環境だったから、忘れてしまったのかもしれない。
「うちの両親はこんな物騒なところごめんだってお台場の方へ引っ越したんだ」
「そうよ…。確かうちも同じ!爆弾がどうとか言ってたもの!」
「そういえば…なんかそんなことあった気がする…」
父が亡くなり、おじ夫婦に預けられた。勿論、遺産目当てだったと思う。それでも衣食住はきちんと与えてもらえていた。懐けなかった自分が悪い。――では何故自分たちは真田家のもとへと送られたのだったか。栞が、煩わしかったから?それはいつものことだったし、彼等は慣れていただろう。ならば、――そういえば、おじに、何かを、言われた気がする。確か、それがきっかけで、真田家に預けられることになったのだ。その何かが――思い出せないのだけれど。
黙々と立ち込める負の感情に飲み込まれないよう、ぎゅう、と腕の中のイヴモンを強く抱きしめた。その時だった。
…ウー!ファンファンファン…。
けたたましいサイレンの音が、彼等の隣を通過していった。どこかで事件でも起こったのだろうか。――事件、という考えは、今の子供たちには、『ヴァンデモン』に直ぐ様繋がった。
「もしかして、ヴァンデモンが!?」
子供たちが顔を見合わせ、道路を横断するパトカーのあとに続いた。
先ほど感じた嫌な予感――これだったのかもしれない、と栞はペンダントを強く握りしめた。誰にも言わなかった。否、言えなかったことが招いた事態かもしれない、と心が痛んだ。
17/07/27 訂正
11/09/04
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