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「なんだって!?お台場全体が隔離されてる!?」
「…ああ。きっとヴァンデモンのやつらが…」
「―間違いない。八人目を捕まえて栞を手に入れるために、お台場事封鎖したんだ!」


 太一は髪をかきむしり、吐き捨てた。そのための、たくさんの人がバケモンによって連行されていってしまった。――己の、母も。


「子供も、大人も、見境なしに」
「くそぉ!!」


 足元に捨てられていた空き缶を、力のままに蹴飛ばした。それはカラン、カラン、と音を立て転がり、少女の足元に落ち着いた。「わたしの、せい、なの?」あどけなさを残した声は、震えていた。


「私のためにみんなが…お母さんが捕まったの?」
「ちっ、ちがうよ、ヒカリ!お前が悪いんじゃない。ヴァンデモンのせいだ」


 なだめるように、優しい笑みを浮かべながら、太一は妹の肩を掴んだ。目を合わせるよう屈み込んで、同じ色をした瞳を見つめる。


「いいか、ヒカリ。あとのことはお兄ちゃんに任せて、ヒカリはここでじっとしてるんだ」
「……」
「ヤマト」
「ん?」
「しばらくヒカリをここで預かってくれないか」
「あ、ああ。わかった」
「…ヒカリ。必ずお母さんたちを助けてくるからな」


 力強い兄の言葉に、ヒカリは顔をあげる。「お兄ちゃん…」思い浮かぶのは、昨夜、ベランダで別れてしまったパートナーのことだった。「テイルモンもおねがい…」今にも泣き出しそうな妹に、「おう!任せとけ!」太一はいつものようにニッと笑ってみせた。


「7時半か…。二時間経っても俺が戻らなかったら、ヒカリを連れて脱出してくれ!―行くぞ、アグモン!…ヒカリのこと、頼んだぞ!」
「お兄ちゃん…」


 走り去る兄を見つめる瞳が、幼い頃、遠くの場所へと引っ越してしまった少女の瞳と似ていた。―色々心配なことが多過ぎる。ヒカリが八人目だというのならば確実に守ろ通さなければならないし、今どこにいるか分からない栞のことだって気がかりだ。唯一、タケルがお台場にいないことだけが、ヤマトにとって安心できることだった。

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