「ヤマトのお父さん、またお会いしましたね」
「まっまたって…お前はなにもんだ!?」
「“なにもん”じゃなくて“ガブモン”から進化した“ガルルモン”ですよ」
「“ガブモン”…?進化…?」
「お〜〜〜い!!」
「――丈先輩?」
戸惑う父親の言葉を遮ったのは、彼らにとって聞き覚えのある声だった。「お兄ちゃーん!パパ―!」そして何よりも身近な存在だった。ヤマトは表情に笑みを浮かべた。
「タケル!」
「タケ、ル…?」
「パパぁ!」
「おまえ…どうしてここに…」
一瞬にしてタケルは父親の足元に抱き付いた。驚愕を浮かべる父親に対して、タケルは兄と自分が心配できてしまった、母親も途中までは一緒だったと不安そうに自分を見上げ呟いた。
――ずいぶんと、大きくなったものだ。その思いが、胸を占めていく。言葉は出てこなかった。その代り、手をそっと頭に乗せた。タケルは、嬉しそうに微笑んだ。
「…そのデジモンは?」
ガルダモンの手に収まっていたリリモンに近づいたのは、丈たちと共に来ていたもう一つの存在だった。彼らは彼を知らない。ただこの場にいる仲間といえるデジモンは、彼らのパートナーだけであるので、このデジモンはふつうに考えたらヴァンデモンの手下だ。―なぜ、丈たちと共に。
鋭い視線を向けられるも、彼は一直線にリリモンのもとへ寄り、その体に触れた。色を喪ったリリモンは見るからに痛々しかった。
「ヴァンデモンのデッドスクリームを受けたのですね」
「だったら何なの」
刺々しい口調を気にも留めず、彼は重々しく頷くと、まるでまじないをするようにその手を動かした。みるみるうちに緑色のオーラがあふれ出し、彼は視線をリリモンへと向けると――彼女に向け、そのオーラを放出させた。彼の手から放たれた緑色のオーラは、リリモンの全身を包み込んでいく。
―それはあの人が与えてくれる光に似ていると、そう錯覚した。固まったまま動かない脳内が、次第に解かれていく。冷え切った体が徐々に熱を帯びていく。外気を感じられる。ミミがいる世界を、感じられる――。彼女は、色を取り戻した。
「リリモン、!」
「―あれ?あたし…。 …わあ!」
ガルダモンの手から降り立ったリリモンは、美しい妖精だった。嬉しそうに笑うリリモンに、空たちは心から安堵した。
しかし、つい、とヤマトの視線は彼に向けられた。タケルは兄のその視線にハッとして、彼の眼前に立ちふさがる。まるで、かばうように手を広げて。
「このデジモンは悪いデジモンじゃないよ!タグと紋章をもってるんだ!」
「え!?紋章を!?」
「本当だ。嘘じゃない。―ほら!」
丈の促すような言葉に、彼は手にした紋章を彼らに見せた。淡い桃色のタグ。それは――“光”の紋章。
「あっ…」
「これは…」
「ヒカリの紋章とタグだ」
「え!?」
「ヴァンデモンに捕まっているテイルモンを助けたいんだ」
「テイル、モン…?」
「テイルモンが八番目のデジモンなんだって!」
タケルの言葉に彼らは一様に目を見開き、驚いた。
「ヒカリはいったいどこに?…守人は?」
「――それが…」
「…先ほどゲンナイさんからメールが届いたのですが、それによると、あそこにはヴァンデモンの結界の中心があるそうなんです」
俯き目を逸らすヤマトを遮るように、光子郎はフジテレビの展望台を指さした。指示された運命か、彼らの目線の先には、ちょうど展望台へと移動しているヴァンデモンの姿がうつった。すべてが分かっているかのように、こちらを見て、口角をあげる。「テイルモン…っ」――彼の手の中には――八番目のデジモンがいた。そして――栞も。
「…っみんな!展望台へ行くぞ!!」
「ああ、よし、案内しよう!」
声を張り上げたその時、目の前にタスクモンとスナイモンが再び姿を現した。
「ガルルモン超進化ー!――ワーガルルモン!!」
「ここは私たちに任せて!」
「ヒカリを助けるんだ!!」
「空っ、栞もお願いよ!!」
「ええ、もちろんよ…!!」
「わかったっ!!よし、行こう!」
「おう!」
その場をワーガルルモンとガルダモン、ズドモンの三体に任せて展望台へと向かおうとした時、彼の―ウィザーモンの体が崩れ落ちた。
「くっ…」
「ウィザーモン!大丈夫!?」
「手を貸そう!」
――守人。守人よ。どうか。
どうかテイルモンを―まもってくれ――。
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