その姿が明るみになる。まるで機械のような起動音が霧の中から響き、背中にはエンジェモンを攻撃したと見られる砲撃台―ムゲンキャノンが装備されている。
 感情を持たない、破壊だけを目的に動く兵器のように感じた。


「あっ!アイツは究極体デジモンです!!」


 急いでパソコンでデータを取得した光子郎の声が、子どもたちを絶望の渦に突き落とす。―また、究極体デジモンだって?


「ムゲン、ドラモン…ッ!」


 感情を何も持たないような瞳が、彼らを射抜いた。先ほどとは異なる恐怖に支配され、子どもたちは戦慄し、動けなくなった。


「――みんな、急いで進化を!!」


 そんな中、赤く染まった瞳で他を見回し、強くこぶしを握る少女がいた。真っ先に恐怖で押しつぶされてしまいそうな少女は、ただ、目の前のデジモンを敵と認識し、ただ、睨み据える。


「太一!」
「お、おう!!」


 いち早く反応したのはグレイモンだった。太一とグレイモンの思いに呼応したデジヴァイスは橙色の光を放つ。
 他のデジモンたちも同じように、それぞれの色を放った。


「…この…この世界を……思い通りにさせるものか……!」


 ぽつりと彼女の口唇から洩れた言の葉は、誰が拾うでもなく、ただ進化の光の前に消えていった。


「グレイモン超進化ァ!―メタルグレイモン!!」
「ガルルモン超進化ァ!―ワーガルルモン!!」
「カブテリモン超進化ァ!―アトラーカブテリモン!!」
「バードラモン超進化ァ!―ガルダモン!!」
「トゲモン超進化ァ!―リリモン!!」
「イッカクモン超進化ァ!―ズドモン!!」
「テイルモン超進化ァ!―エンジェウーモン!!」


 倒れ伏したエンジェモンを除いたデジモンたちは完全体へと進化を遂げる。
 究極体相手とはいえ、さすがに7対1、しかもこちらだって完全体だ。太一は拳を握りしめ、「いけいけ!コテンパンにやっつけろ!」と大きく声援を送るが、相対してその妹であるヒカリの表情は極めて暗い。「でも…適わない…」悲しげに寄せられた眉は総てを見通しているようだった。妹の言葉に気を取られている間にデジモンたちはムゲンドラモンに向かっていく。


「みんな、行くぞー!!」


 だが、背中に装備されたムゲンキャノンから放たれる高密度のエネルギー弾は的確に一匹ずつデジモンたちに命中していく。


「………私の、私の、力が、弱いから?」


 まるで、それは適わないとつぶやかれたヒカリの言葉への返答だった。呆然と呟いた栞は、泣きそうなくらい歪んだ表情で、自分の胸元をぐしゃりと掴んだ。


「私が…弱いから…?」


 七体のデジモンが無残にも地面に倒れ伏していく中、ムゲンドラモンは∞キャノンを撃ち続ける。遮るものなど何もない砲撃を受け止めたのは、地面だった。一発で完全体を伸してしまうほどの威力のエネルギー弾が、それが何発も、何十発も放たれ続けた。 地面は、ぴきり、と音を立てて崩壊した。


「わあああ!!?」
「きゃあーっ!!」


 子どもたちの足場が、崩れ落ちた。彼らの思いも共に、崩れ落ちていくかのように。


15/09/11

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