★ ★ ★
ヒカリが目を覚ますと、兄とテイルモンが心配そうに自分を見つめていた。
「ヒカリ…」
「大丈夫、ヒカリ?」
「お兄ちゃん、テイルモン…」
「無事だったか…」
ほっと安堵しように微笑む兄。周囲を見渡せば、みなが同じように心配そうに自分を見ていた。当人のヒカリだけが状況を把握できず、首を傾げている。
「どこか痛みとかない?」
「ううん、みんなどうしたの?」
「う、うん、なんでもない。…ヒカリ、さっきのこと…」
「さっきのこと?」
「い、いや、覚えてなきゃいいんだ…」
太一は笑ってヒカリの頭を撫でて立ち上がり、振り返った。
知りたかった答えを教えてもらった。託された願いがあった。彼らが争う理由はもうどこにもなかったのだ。
「ヤマト、これで選ばれし子供たちの答えは分かったよな?」
「…ああ」
「やっぱりこの世界のゆがみを正せるのは俺達しかいないみたいだ。ヤマト、また一緒にやろう」
太一は笑ってヤマトに握手を求める。もちろん、ヤマトは応じてくれるはずだ。そう、一抹の願いを込め、信じて。
――だが、ヤマトは握手には応じず、目を閉じた。深緑の瞳が瞼の向こうに隠される。
「――すまん」
「お兄ちゃん…!!」
「…俺、間違っていたのかな」
「いや、悪いのは全部俺だ」
そうきっぱりと言い切って、ヤマトは踵を返した。
「じゃなくて!俺が今までやってきたことだけど…」
「…俺なんかが偉そうに言うことじゃないんだけど。正しいとか間違ってるとかじゃないと思うんだ。ただお前にはお前の道があり、俺には俺の道があるんじゃないか。自分の道がどんな道かは俺にも分からない。お前と戦えばそれが見つかると思ったが、……謝って許してもらえるとは思わないが――すまなかった」
振り返ったヤマトは、先ほどまでと違う、どこか妙にすっきりしたような、決意を覚悟した顔だった。
「でも、俺は自分の道を探したい。いや、探さなきゃいけないんだ!……だから、俺はみんなと別れて行動する。ツノモンと二人だけで…」
「っ考え直してください!だってヤマトさんの紋章、つまりヤマトさんの個性は…っ!」
「……友情、か」
光子郎が説得を試みるも、ヤマトは言葉を遮って息を漏らすようにつぶやいた。
「だけど友情って嘘くさい言葉だよな。…いや、俺が本当の友情を知らないだけかもしれないな」
そうして己を卑下し、嘲笑のような、笑みを浮かべる。
「…ね、ねえ、こうしたらどうかしら。二手に分かれて行動するの」
「悪いが、一人で行かせてくれ」
「――そう。でもヤマトなら大丈夫よ。信じてる」
「お兄ちゃん…僕…どうしたら…」
空の提案も一蹴し、ヤマトは首を横に振る。何を言われようとも、もう、彼の心は定まっていたのだ。その気持ちが分かってしまったから、空は断腸の思いだろうが、受け入れ、彼の背中を押した。だが、その考えに幼いタケルはついていけない。今までは兄が道しるべだった。
back next