「お前は一人でも十分やっていける」
「でも…!」
「タケルくんは私たちと一緒よ。ヤマトは一人で考えたいことがあるの。行かせてあげましょう」
「……うん」


 タケルはゆっくりと頷いた。血を分けた兄との別離が、決して寂しくないわけがない。つらくないわけがない。それでもタケルは笑って見送ることを決めた。長い冒険の中でのタケルの成長が垣間見れた瞬間だった。


「ありがとう。じゃあ」


 決意を胸に、彼は背中を向ける。もはや、止めるものはいなかった。


「ヤマト、くん」


 正直、栞には直近の記憶が欠けている。それはもちろん、兄が彼女の体に入っていたせいなのだが、彼女はそれを実質的には知らないでいる。
 確かに、栞が記憶していた、先ほどまでのヤマトとは違い、自らを受け止めた上での決意であると理解できた。

―――…お前を守る資格も、守りたいって思う資格もない!だって俺は、タケルさえ無事であればそれで…それでいいと思った…。
―――……ごめん。

 かけた八角形。元に戻らない。
 背中を向けたヤマト。―遠ざかっていくその背中。

―――…友を…っ、信じる気持ちを!!
―――…友情を!!!

 不意に脳内に、ヤマトの叫び声が木霊する。
 気づけば、一歩、また一歩とふらつく足を進めていた。自分ではないものに体を渡していたからか、栞の体はどこか不安定だったが、彼女自身はそれでも手を伸ばす。


「私…っ」


 もし、許されるなら、信じていたい。
 もし、許されるのなら、ありのままの気持ちを伝えてみたい。


「私、覚えてる…っ!あの時、友情の紋章が光ったとき…!!」


 彼は立ち止まらない。


「あの時、確かにそこにあなたの友情はあったから…!!」


 消えゆくその背中に。


「…っ待ってるから!!!」


 心から、思いを告げた。


「ずっと……ずっと……元に、戻れる、その日まで―――…」


 声は空気に溶けてきえていく。それでもきっと彼には届いているのだろう。それは、きっとなんて曖昧なものではなく、絶対。彼女と彼は、仲間なのだから。

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