「…だ、め…だよ……?」
嫌な予感がする。先ほど感じたものと同じ系統のものだ。倒れるチューモンの姿が、彼と重なる。
「だったら俺も!!」
「馬鹿もん!お前らはこの世界の最後の希望だッピ!!」
強い意志を持った、その姿。いつだって、どんな時だって、励まして、支えてくれた小さな姿。
その小さな姿が、自分をとらえ、微笑んだ。
―――…ごめんなさい。私が、よわいから。何も、守れない。
―――…泣くことはないッピ!私が、代わりに守るッピ!だから安心するッピ。
―――…ピッコロモン…。
―――…何かあったときは私がいるッピ。だから、もう悲しむ必要はないッピ。…約束するッピ。あなたの危機には、必ず私が駆けつけるッピ。
記憶の蓋が開いていく。いつだって、どんな時だって、傍にいて、励ましてくれた。どんなに弱くたって、どんなに情けなくたって、それがあなただと言ってくれた。時には叱られたこともあって、ときには呆れられたこともあった。全て、自分のために。
小さな体に手を伸ばすのに、その手はするりとかわされた。瞬間、栞の感情が暴発する。まるで駄々っ子のように首を横に振り、彼の行動を否定した。
「だ、めだよ!行っちゃダメ…ダメ!!ダメだったら!!」
「――ありがとうッピ、守人。私が、あなたのこの世界を守るッピ。約束を、果たすときッピ」
全てを知って、彼は微笑む。
全てを思い出して、彼女は叫ぶ。
「ダメ、ダメ、私が行く!私がアイツら倒してみせる!だって、だって私、守人なんでしょう!?大丈夫、私がやるから、だから、だからお願い!行っちゃダメ、行かないで!!!」
手を伸ばすのに。いつだって、この手が望むものに届くことはなかった。――今だって。たった数ミリの距離なのに、手が届かない。何も、掴めない。
背中から腕を回され、強い愛情で引き止められる。それでも、栞の感情が止められることはない。ほろほろと、瞳からは涙が零れ落ちる。
「栞、ダメ、…ダメよ!!」
「離して!!―ピッコロモン!!待って、ダメ、ダメだよ!!ピッコロモン!!!」
「栞…!!」
「嫌だ、待って、嫌だよ、嘘だ、やめて、ダメ、嫌だ、やだ、やだ、やだ―――!!」
結界の外に出た彼は最後だと知って、また微笑んだ。ただ優しく微笑んだ。
そして、表情を引き締め、子供たちの顔を見回した。
「お前たちなら、きっと見つけられるはずだッピ!足りない何かを!そうすれば勝てるッピ!―行け、選ばれし子供たちよ!……守人を、誰よりも優しいその人を、頼んだッピ…」
手にした錫杖で勢いよく結界を打つように遠くへと飛ばす。
遠ざかっていく結界を見つめていた彼の背後から冷えた空気が雪崩れ込み、ピッコロモンは固く、唇を結んだ。
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