「ピッコロモンでしたね」
「…!!」
「完全体の身で本気で私たちの勝てるとでも思っているんですか」


 随分と感情のない声だ、とピッコロモンは笑う。おそらく、寸でのところを邪魔されて、腸が煮えくり返るくらい、己が憎いに決まっている。だから、挑発をするように、また笑った。
 彼らに勝てないことくらい、知っている。己の力では歯向かうことすら無謀であることも知っている。

 それでも守ると決めた。あの人が悲しまないように。あの人が辛いときは、自分が変わりに引き受けることも、ずっと前に決めた約束。
 そしてあの人のことを、この世界のことを救ってくれる選ばれし子供たちのために、この命、使うことも。

 

「いくらお前たちが“狩人”の力を手にしたとしてもあの人本来の力を引き出せるわけではないッピ!」
「それではどうですかねぇ」
「ッ舐めてると痛い目に遭うッピ!」


 それで世界が救われるなら。
 あの人がまた笑ってくれるなら。

 自分の命くらい、投げ出すことすら厭わないとさえ。







 遥か彼方で、爆発音が鳴り響いた。それが何を意味するかなど、誰に言われなくても、分かってしまった。


「…あ…ああああ……ッ」


 結界の中、栞の体は自分を抑えていた空を伴って崩れ落ちていく。泣き崩れるように嗚咽を吐く栞の傍で、ヒカリが小さくつぶやいた。


「今…ピッコロモンが死んだわ…」


 小さな尊い命がまた、データとなって消えていった。
 世界をすくうために戻ってきたというのに、たった二匹の命さえ、彼らは救えなかった。


17/08/06 訂正
15/09/11

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