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そこはスパイラルマウンテンの頂―そこに降りたつ大きな城にダークマスターズと呼ばれる究極体デジモン四体の姿があった。
「守人、選ばれし子供たちとそのデジモンたち、こんなところにいましたねえ」
大きな望遠鏡をのぞき込んだ道化師の口許に浮かんだのは、冷酷な笑みだった。ピッコロモンの結界によって邪魔をされ、消えてしまった子供たちの行方をようやく突き止められたのだ。手も足も出ず散っていったピッコロモンの思いもむなしく、やはり己の手の上で踊るしかない子供たちを思えば笑わずにはいられない。
「海岸地帯は海の王である私の支配下。選ばれし子供たちとそのデジモンたちの命、私がもらった。問題は私の率いるディープセイバーズ暗黒軍団の中から誰を使うかだが…」
問題といいながら、さほど問題でもなさそうである。メタルシードラモンは低く唸るように笑い声をあげ、その脳裏に浮かぶのは子供たちとデジモンたちの最後を思い、更に深く笑った。
「メタルシードラモン。守人は殺さず連れ帰ること、忘れてはいけませんよ」
「ああ、忘れてはいない」
その返答を聞くや否や、ピエモンは階段を降り、厳重に囲われた箱の中から一つの白く光る勾玉を手に取った。
「そう。守人は生かしておくのです。――月が満ちる、来たる日まで」
キラ、キラとその勾玉は光を発する。何かを憂うように、何かを守るように。ただ、光り続けていた。
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潮騒を聞きながら、子どもたちは海岸沿いを歩き始めた。立ち止っていては何も始まらないと、誰かしらが言ったからである。
「またファイル島に戻ってきたということは…」
「何か意味があるのか…?」
「意味があるからまたファイル島に戻ってきたんじゃないの?」
「でもどういう意味があるんだ?」
交錯する疑問を口ぐちにしていたところで、ばちゃばちゃ、という激しい水飛沫が聞こえ、栞は振り返る。
「どウしたノ?」
「音が――…ううん、声も」
「声?」
「助けてぇええ―!」
耳を澄ましたその時、全員の耳に届いたのは救援を求める大きな叫び声だった。その方角を見ればやはり大きな水飛沫をあげて誰かがおぼれているように見える。
栞の心臓が大きく跳ね上がる。―もう誰も失いたくない。助けないと――。
「助けに行かなくちゃ!」
「でもデジモンたちは疲れてるし…」
「私たちで助けに行こう!」
「うん!」
栞の燻るその思いを口に出したのは、小さなヒカリだった。彼女の瞳に灯る決意に、兄に似た何かを感じる。それは眩い光。恋い焦がれる光の源。水を求める魚のように、両極端にいる存在だと、今はまだ気づきもせずに。
「助けて、助けてぇえ〜〜!」
走るヒカリとタケルの背を追いかけ、「みんなで助けに行こう」と二人の兄が止める。
子どもたちはカヌーを見つけ、それに乗り込み、急いでおぼれているであろうデジモンのもとへと向かった。しかし近づくにつれ、何か違和感が襲い掛かる。その違和感の正体はすぐに知れた。
「浮輪…?」
「何よ、浮輪つけてるのにどうして溺れるのよ?」
目に飛び込んできたのは浮輪。しかし頭は出ていない。何か角のようなものが浮輪に突き刺さっている――?
至極当たり前の疑問を口にしたとき、そこから大きな水柱があげられた。隙間から見えたピンク色の肢体は、やはりデジタルワールドでの記憶の中では古いものだ。
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