「今は疲れてぐったりしているけど、選ばれし子供たちのデジモンは確実に強くなってるみたいだ」
「お兄ちゃん、どうしてわかるの?」
「前にシェルモンと戦った時は、アグモンがグレイモンに進化してようやく勝てた…」
思い返されるのは遠い記憶。
はじめて、アグモンが進化した日。その時唯一食事をしていたアグモンだけが進化することができ、そうしてようやく手にした勝利だった。
「なのにアグモンが進化しないでも今日は勝てた」
「みんなが力を合わせて戦ったからだよ」
「でもみんなで戦うよりグレイモンのパワーの方が強かったはずだ」
「シェルモンの力が弱くなったのかしら」
妹の言葉に、太一は否、と強く言い放つ。
「みんなのデジモンは確実に強くなってる!」
その言葉は、案外すんなりと心の中に落ちていった。
はじめは幼年期からスタートしたデジモンたち。だが始めてこの世界に訪れた時よりも格段にレベルアップしていることは間違いない。進化して、戦って、時には負けて、時には勝って、自分たちよりも遙かに強いデジモンたちと戦うことだって多くあった。そのたび彼らは成長し続けていたのだ。貪欲だからこそ、彼らは吸収していく。、自分のために、子どもたちのために、仲間のために、強いて言えばそれはデジタルワールドのために。守るために、強くなりたいと。
「実はピッコロモンに言われた言葉がずっと引っかかっていたんだ――」
守人である栞と、選ばれし子供八人、人数がそろえば世界は救われると信じて戦ってきたと、自分は言った。それに対して、彼のデジモンは人数がそろっただけでは勝てないと言った。
反芻される人数が揃っただけでは勝てないという言葉―裏を返せば、人数プラスアルファが必要ということになる。今の段階ではまだ足りないもの、それを太一は成長と捉えた。
「ということはみんな強くなったから勝てたんだよ」
「私もそう思う!」
「そうかしら?」
「立派に成長したんだ」
「そういわれるとそんな気がする」
「光子郎はんもそう思いまっか?」
「まあぼちぼちやな」
「あらら…」
「僕も成長した?」
「もちろん!成長した!」
「私は?」
「私たちは選ばれし子供たちに入ったばかりだからまだじゃない?」
「なんだ、がっかり…」
子どもたちとデジモンたちの絆と同様に時の経過は確実に彼らを強くさせた、と栞は独り目を閉じる。―成長、しなければならない。己(栞)自身が。飲まれてはならない。己(闇)自身に。そのためにはもっと知らなければならない。己(守人)自身のことを。世界のことを。―知りたい。聞けばイヴモンは答えてくれるだろうか。
ちらりと腕の中の存在に視線を落とし、不意に抱きしめる。きょとんとしたイヴモンの視線が栞を射抜く。―きっと彼は答えてくれるだろう。けれど決して栞に害のないことだけを。栞が知りたい先の部分に万一害のある情報があるのだとしたら、彼は決してそのことを口には出すまい。彼は栞の身を守るためなら、自身は悪になって恨まれも構わないのだから。
恐らく彼のみが、デジモンとしての成長はしていない。進化ができない理由はそれがルールだからと言うが、それ自体、恐らく守人がかかわっていることなのだろう。だから、向けられる愛情が、他のデジモンたちが子供たちに向けているものとは、まるで違うとは分かっていた。けれど栞は根本的な部分を理解していない、理解以前に知る由もない。皆が慕う理由も、全く知らない。無知だから、たくさんの者たちを犠牲にする。成長できないままなら、ここから先、またたくさんのものを失くすのだろう。だから。知りたい。知っている人に、教えてくれる人に会いたい。そう、切実にねがった。
15/12/02
back next
ALICE+