「…この間に何とか進化できればいいんだけど…」
「そう…だね。どちらにしても逃げることはできないんだし…」
「こノわズカな時間で補給でキればネ」
「うーん…疲れてお腹もペコペコ…そうだ!」


 思い立ったら即行動、ゴマモンは岩と岩の間に手を突っ込み、貝を掘り出した。その行動に納得したパルモンは海藻を見つける。確かに満腹とまではいかずとも腹の足しにはなるだろう。彼らには使命がある。子どもたちを守らなければならない。やるしかないのだ。


「探せばあるある〜。うまそう!」


 空腹時であるから何でもおいしく感じる。量は限られているが、いつアノマロカリモンが襲ってくるともしれないため時間も限られている。ゴマモンが食べた貝の殻は海へと放り投げられる。

 コツン。

 些細な音が聞こえ、栞は海を見た。海の中の珊瑚や、それに近しいものにでもぶつかったのだろう。しかしやけに近い。そして違和感。己の中で湧き上がる電子音が、まるで警告するように輪唱した。それは一つの危険を告げる。


「くる…!」


 警戒するように臨戦態勢を取る栞、彼女にしがみつくミミ。そんな二人を守るように、自然と、丈は前に出た。慌ててデジモンたちも子供たちの前に出る。
 「アノマロカリモン〜!!」数秒もしないうちに海からのっそりと顔を出したアノマロカリモンの額が少しだけ赤くなっていたから、もしかしたらゴマモンの食べた貝の殻が彼に当たってしまったのかもしれなかった。
 栞は目をつむる、そして指を組んで祈りをささげた。まるでひらひらと舞い散る桜の花を掴むように、二つのデータをつかみ取る。一つはゴマモンへ、もう一つはパルモンへ。二人のデジヴァイスを通して分け与える。


「パルモン進化ァ!―トゲモン!!」
「ゴマモン進化ァ!―イッカクモン!!」


 トゲモンの「チクチクバンバン!」とイッカクモンの「ハープーンバルカン!」がアノマロカリモンに炸裂するも、彼の鋼鉄のような固い甲殻は諸共しない。


「トゲモンもイッカクモンも成長したから負けるとは思わないけど…」
「それに二体一だし大丈夫よ!」


 子どもたちは口では余裕を見せるも、表情はハラハラと落ち着かない。


(……コンディションが完璧だったら…可能性としてはあるけれど……今の状態じゃ…成熟期のままじゃ完全体には勝てない)


 栞の危惧通り、力の差は歴然だった。いくら攻撃を放っても、アノマロカリモンは払いのけてしまう。それどころか反撃を喰らってイッカクモンもトゲモンの体はボロボロになっていく。
 ――彼らに与えるデータをもっと大きなものへ。栞は己の手を見つめ、ぎゅ、と握りしめた。


「負けてる…このままじゃまずいわ!」
「もう一度進化をすれば勝てるかもしれない…!!」


 丈の視線が栞を射た。考えていたことを見透かされたようで、ドキリとする。だが己のすべきことを、栞は理解していた。自分たちを守るために犠牲になったチューモン、ピッコロモン。彼らの勇気を無駄にはできない。今度は自分が、みんなを守るのだ。
 もう一度掌を握りしめ、大きく頷いた。


「やってみます!」
「…ッあぶナい!前、前!」


 その考えが読まれていたのか、ただ単に目についたのかは分からないが、アノマロカリモンの標的がデジモンたちから子供たちに早変わり、「砂シャワー!!」と多量の砂を子供たちにめがけて吐き出した。恐らく海の家で倒れている彼らが喰らったのはこれだ!子どもたちが悲鳴を上げながら急いで岩陰へと避難すると同時に、痛みにうめく体に鞭うってイッカクモンたちがアノマロカリモンを引き止めた。



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