「待て!!相手はこっちだ!!!」
「スティンガーサプライズ!!」


 素早く体の向きを変えたアノマロカリモンは彼の必殺技を放つも、寸でのところで交わされ、その攻撃は地面を抉った。するとどうだろう。抉れた地面の中から彼の大好物である貝が現れたではないか。


「わあおいしそう!」

「―今だ、イッカクモン!!」
「超進化するのよ!」


 貝を持ち上げるために、アノマロカリモンの注意が逸れる。―今だ。もう一度栞は指を組んで目をつむる。眩い光が差し込んだ。大きな光だ。逃がしてはいけない、あれは彼らにとって必要なものなのだから。誠実と、純真。二つの色を、自分の中で溶かす。


「おねがい…!」


 しゃらん、しゃららん。鈴の音が、風に乗って栞の中で響き渡る。


「トゲモン超進化ァ!――リリモン!!」
「イッカクモン超進化ァ!――ズドモン!!」

「スティンガーサプライズ!!」


 まずいとアノマロカリモンの中で警告音が鳴り響く。すぐに体制を整え、必殺技をお見舞いするも、それはズドモンの背中の装甲によってはじかれてしまった。そればかりか、その隙にリリモンの「フラワーキャノン!」が額に命中し、更にズドモンの「ハンマースパーク!」が決まり、それまで蓄積されていた微々たる負傷も相まって、その場にひっくり返った。


「やったぞ!!」
「―でもまだメタルシードラモンが!みんなが危ない!」
「早く行きましょう…!!」
「オイラに乗ってくれ!その方が早い!」


 目を回して完全に伸びてしまっているアノマロカリモンの尾を掴んだズドモンの背に乗って、急いで海の家まで戻った。


「こうなったら残りの二人はあとでいい。先にここにいる子供たちを始末して、残りの二人を始末し、そして守人を捕まえてやる!」


 海の家に近づいたとき見えたのは、メタルシードラモンが口から炎を吐いている姿だった。彼の口上から察するに、とりあえずはまだみんなは無事らしい。
 だがあの様子だと――。


「メタルシードラモンは海の家もとろもみんなを燃やすつもりよ!!」
「そんなことはさせない…っ」


 敵に気づかれず中に侵入する方法は――と視線をめぐらせたリリモンの目に、海の家の壁に空いた穴が飛び込んだ。


「あそこから入りましょう、さあ急いで!」


 何があるか分からないためリリモンが先導し、ズドモンは身体が大きすぎて入れないため外で待機、子供たちはリリモンのあとを追った。
 中に入れば仲間たちは目を覚ましている様子だったがどこか危うい。


「太一しっかりして!」
「リリモン…?」
「空さん!」
「ヤマト、光子郎!」
「タケルくん、ヒカリちゃん…!」


 栞は真っ先に小さな二人へと駆け寄り、その身体を労わるように起こす。だが時間は残されていない。ゆっくりしていたらそれこそまとめてお陀仏だ。
 「みんな早く起きて!」「なんや…?どうなっとるんや…!?」説明するよりも早く外へと促せば、彼らはふらつきながらもリリモンのあとへついていった。


「大丈夫?がんばって…!」


 二人の小さな手をとって、なるべく急いで外へ出る。その時「ファイヤー!!」と大きな声とともに熱が背後から伝わり、ぞっと恐怖を感じた。もう少し来るのが遅かったら、仲間たちはあの中で火に巻かれて死んでいただろう。
 炎は海の家を包み込み、轟々と燃え盛る。ズドモンは引きずってきたアノマロカリモンを海の家へと投げ捨て、彼らは急いでその場を離れた。


「六人の選ばれし子どもたちと、そのデジモンたちの命もこれまで!ハッハッハッハ!」


 子どもたちはあの海の家の中にいるものだと思っているメタルシードラモンは嬉々として高笑う。そら見たことか。己が選ばれし子供たちを葬り去ってやったぞ。あとは残りの二人を始末し、守人である栞を捕まえればジ・エンド。さあ、そろそろ子どもたちの泣き叫ぶ声が聞こえてくるだろう。にやり、と口角があがった、その時――「あちちちっちちち!あついっ!あつい!!」それはそこから聞こえて来るはずもない声。姿。火だるまになったアノマロカリモンが必死に水を求めて自分の横を通り過ぎていった。


「なに!?」


 獰猛な赤い瞳が、急いで燃え落ちていく海の家へと向けられる。消し炭にしてやるつもりだった子供たちの無残な姿はどこにもなかった。


15/12/22

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