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ヤマトのハーモニカが空の下で音色を響かせる。安全な場所があるかは知れないが、せめてメタルシードラモンに見つからない場所を探してみせると言ってくれたホエーモンに連れてこられたのは、三日月の形をした小島だった。
戦いの最中とは思えぬほど、穏やかな海風の中での休息だった。食糧を取ろうと釣りをする男子の横で、テイルモンは素早く跳ね上がった魚を自慢の爪で調理してみせ、更にパルモンも同じく跳ね上がった魚を自慢の手でつかむも、あまりの大きさにつぶされてしまった。そんな折、ふと響き渡っていたヤマトのハーモニカの音が途切れる。太一は、横目でヤマトを盗み見た。
「どうした、ヤマト」
「…ああ、俺たちはダークマスターズに勝てるのかって。アイツらは今までのデジモンとは違う。このまま戦って俺たちは勝てるのか?」
行動派の太一とは異なり、ヤマトはいつだって慎重派だった。今までも、新しい行動をするときも、敵と相対するときも、彼はためらいを見せていた。おそらくは幼い弟であるタケルを思って、さらに言えば彼の育った環境のせいもあるかもしれないが、彼は一歩引いたところで状況を見極めていた。―このまま進んでも、待ち受けるのは敗北だけだ。敗北はそのまま死を意味するのだろう。
今までの敵とはわけが違う。戦って勝てるという確証が見いだせない。現に、あのヴェノムヴァンデモンを破った二体の究極体デジモンであったウォーグレイモンやメタルガルルモンでさえ歯が立たなかったのだ。勝てるわけがない。不安は胸の中でぐるぐると回り続ける。そんなヤマトの雰囲気におされ、いつもは強気な太一でさえ、言葉を詰まらせる。
「可能性はあります。ウォーグレイモンなら」
ずっとデジモンアナライザーとにらめっこしていた光子郎がパソコンを片手に二人の間に座り込んだ。
「ドラモンキラーです」
「ドラモン、キラー?」
「なんだそりゃあ」
「ウォーグレイモンの両腕についている武器のことです。デジモンアナライザーによると、この武器はドラモン系のデジモンには非常に有効だということです。ドラモンキラー…。…これを使えばあるいは…」
「やったぜ光子郎!ドラモンキラーか!」
一つの可能性を見いだせた。そしてそれは大いに彼らにとっての希望となりえる可能性だった。―できないことではない。もしかしたらメタルシードラモンをやっつけることができるかもしれない。太一の顔に、ようやくいつもの笑顔が浮かんだ。
「おおい、アグモン!お前の出番だ!」
パートナーを振り返る。いつだって、どんな時だって頼りになるやつだ。お前ならやれると思っていた!
ふりかえった先でアグモンが先ほどパルモンが獲った大きな魚を丸ごと飲み込もうとしていて、太一は少しだけその考えを改めてしまったのはいうまでもない話だ。
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