「ミミちゃん…やっぱり本当のミミちゃんだ…!!」


 チューモンが目覚めたみたいだ。
 感極まる声に、栞はゆっくりと目を開け、彼らのところに戻った。


「そうよ。…ねえ、一体何があったの?」
「仲良かったスカモンは?」
「アイツは…」


 一呼吸おいて、チューモンは口を開く。まるで自分自身に言い聞かせるように、そっと。


「アイツは死んじまったんだよ…!!」


 ぷつり、彼をせき止めていた我慢の糸がきれた。ずっと傍にいた友達の死を、一人で受け止めていた。声に出すと、もう我慢などできなかった。わんわんと泣き出すチューモンに、子供たちは唇を結んだ。

 ―はじまりは、本当に突然だった。

 ふるえる声でチューモンは紡ぐ。子供たちがファイル島を去ったあとも平凡に暮らしていた彼らを、何の前触れもなく闇が襲う。ピシリ。世界に亀裂がはしり、大地は裂けた。闇の中に吸い込まれているスカモン。助けることができなくて、ただ、逃げることしかできなかった。泣きすがっても、もう、スカモンが戻ってくることはなかった。


「暗黒の力が、世界を覆っていった」


 闇が、裂けた大地から湧き上がる。海は轟々とうねりをあげ、渦を巻く。


「そして暗黒の力は自分が支配しやすいように世界を作り変えていったんです」


 違和感はこのせいなのかと、栞は自答した。その暗黒の力によって作り変えられた世界は、自分の知るものではない。―だとしたら、誰が?デビモンやヴァンデモンのように、自分の力を欲するものなのか?


「世界を作り変えたって…」
「どんなふうに…」


 世界をつくるなんて、そう簡単にできるわざではない。ましてや作り変えるなど、おこがましい話だ。
 チューモンはそんな怒気と困惑の含まれた彼らの声を聞いて情景を思い出したのか、目を潤ませ、ぽつりと語った。


「所々に残骸が残っているけど、ほとんどはあの山に組み込まれてしまったんだ…」


 そびえたつ山を支えるのは、海であり森であり町であり砂漠であり、この世界のすべてだった。暗黒の力で飲みこまれたそれらがねじれて、一つ山となっている。その頂はうかがえないほど、山は大きかった。

 その山の名は。


「“スパイラルマウンテン”、って呼ばれてるんだ…」


 その名を口に出したチューモンは、ぶるりとまた震えた。


「スパイラルマウンテン、か…」
「デジモン世界がこんなふうになっちゃうなんて…!」


 彼らからしたら、たった数日離れただけで、デジモンワールドは変貌してしまった。しかもとてつもなく悪い方向へと。子供たちは唖然として言葉をなくす。言うべき言葉が見つけられないし、それ以上に考える間もないくらい、困惑している。

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