「他のデジモンたちはどうなっちまったんだよ。レオモンとか…」


 やっとのことで口を開いたのは、今まで会ったデジモンたちのことを思い出した太一だった。


「分からない…。でも逆らうやつはみんな倒すみたいなこと言ってたから…」
「誰が?」


 ――ダークマスターズ。
 チューモンは、その名を口にする。


「ダーク、マスターズ…」


 名を復唱すると途端に胸騒ぎに襲われ、やはり言葉をなくす。ヴァンデモンのことを初めて知った時以上に、恐ろしい。


「っ! もり、びと…!」


 ハッとしたように栞を探したのはチューモンだった。ミミの腕の中で、必死に栞に手を伸ばす。その手を栞は取った。傷だらけの小さな手だった。


「守人ッ、やっぱり守人はかえってきちゃダメだったんだ…!!」
「え…?」
「あいつら、アイツらは、守人を…!!」
「そいつらも栞を狙ってるってわけか…。てことは、俺たちの戦う相手は、そのダークマスターズってことだな」


 世界を作り変え、実際に支配しているデジモンが、栞の守人たる力を狙わないわけはない。今までの敵すべてが彼女の力を狙っていた。今回も同じ―。
 だがチューモンは、太一のその言葉聞いて感銘を受けるわけでも、英雄のように崇めるわけでもなかった。ただひたすら、怯え、震えた。


「戦う!?とんでもない、適いっこない!」
「俺たちはあのヴァンデモンさえ倒したんだぜ?」
「大丈夫よ、栞さんがいて、選ばれし子供が8人揃っているんだから、世界は救えるわ」


 ゲンナイの言葉通り、選ばれし子供を八人そろえた。そこに守人である栞の力が加われば、恐れるものなど何もない。現に脅威であったヴァンデモンを倒し、ヴェノムヴァンデモンすら倒したのだ。何度もだめだと思ったときもあった。それでも、結果、彼らの光は闇に負けなかった。
 そう力説しても、チューモンのふるえは止まらない。自分の手を取る栞にすがるように、何度も首を横に振った。


「だ、だめだ…あいつらの前に守人を連れて行ったら…守人は殺されてしまう…!」


 『誰が』―『殺される』?
 その言葉の意味が理解できなくて、再び問いかけようとしたとき、栞は何度目か分からない悪寒に襲われた。バッと背後を振り向き、胸元を左手で手繰り寄せ、子供たちを庇うように右手を伸ばした。その前にイヴモンが飛び出る。

 地響きとともに大地が揺れ、地を這うようなおそろしい笑い声が彼らの前に現れたのは、その時だった。


15/06/23

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