ある者は天を羽ばたき、ある者は木を伝い、そうしてデジモンたちが子供たちを探し始めたなか、栞はイヴモンと地面を歩いていた。
他の子どもたちが消えたり、入れ替わったりする中、栞だけには異変は起こらなかった。そこで一つの仮定を立てる。彼らは、栞には干渉できない。栞自身を、何かを使って操ることはできない。―今こうして地面を歩いていても、何の変化も訪れないことから、やはりそれは正しい解釈なのだと悟った。
「誰の仕業ッて分カってル?」
「―多分、ピノッキモン、かなって。…最初に現れたときも、糸を使って操ったりしていたし」
「…ウン、僕も同じ考えダよ。―アイツは残忍な、ダけどタダのガキだカラ」
トゲのある言葉に苦笑を漏らし、あたりを見回すが、子供たちは見当たらなかった。
ミミのことが心配なのはもちろんだが、ヤマトのことも気がかりだったのは確かだ。彼は仲間思いの面が強く、そして何より弟であるタケルに対してはその思いが強く前へと出る。以前から何度かそのことで太一と衝突したし、丈とも短い時間であったがすれ違ってしまったことがあった。―兄とはそういうものなのだろうが。タケルは、どう見ても、独り立ちしたがっているようだ。あの様子では。
そして、と栞は俯いた。あのままでは、闇が蔓延るこの大地に侵されてしまう、と、危惧した。それはヤマトだけではなく、誰もが、この大地に侵されてしまう可能性もある。ミミだって、―もしかしたら、あの太一ですら。
「……はやく……なんとか、しないと…」
「…栞」
無意識のうちにぽつり、と呟いた。
その時だった。
ドクン――!
しゃらららん…
「―――!?」
鈴の音が響き、心臓が強く脈打ち、全身に熱が迸る感覚を受けて、栞はその場に立ち止った。ぐずぐずするわけにはいかないというのに、足はまるでその場に縫い止められたかのように動かない。
「栞、ドうしタ…?」
そんな彼女の様子に気づき、イヴモンは神経を尖らせる。―一点を見つめたまま動かない栞は、不安そうな、それでいてどこか懐かしそうな慈悲深い、そんなどちらともいえない表情でイヴモンと目を合わせた。
「…誰か……いるみたい」
「……そウ」
イヴモンの海のように深く、そして空のように澄んでいる蒼い双眸が鋭くとがる。
いくらメタルシードラモンを倒し、海のエリアを取り戻したといっても、忘れてはいけないことがある。――ここが、ダークマスターズの支配下であるということを。いつ敵が襲ってくるか分からないということを。彼女の後を誰かがつけてるということは、それは敵である可能性が高いということだ。ましてや
今、このエリアに潜んでいるのは、彼女たちの読みが正しければピノッキモン。イヴモンの言葉通り、残忍なデジモンだ。
「栞、気を付けテ」
いつもならびくりと肩を揺らして身を強張らせたり、一歩下がる行動をとる栞が、逆に一歩前に出たのを見て、イヴモンは釘を刺した。
「う、うん…でも…悪い気がしなくて…」
「そレが敵の狙イかもしレないよ。油断しチゃダメ」
「―――…」
それでも、胸の奥でともる明かりを消すことは出来なかった。
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