121 角砂糖より歪な愛情




 選ばれし子供たちが八人。そしてそのパートナーが八体。
 そろわなければ、世界は。



「大丈夫ですー、このままいけば会えますよー」


 再び地面が動き出したことに気づいた栞は慌ててアムモンに問いかけるも、彼は緊張感などへでもないと言いたげにゆっくりと言って見せた。そのことの対して再び機嫌が悪くなったのは言うまでもないが、イヴモン自身が危険だと言わないため、栞は彼に従うしかなかった。


「本当にこのまま行って大丈夫、なの…?」
「まあ見ててくださいよー」
「でもピノッキモンのところへ行っちゃうんじゃ…」
「ははは、俺を信じてくださいー」


 口角をあげ、目じりをさげ、彼はにっこりと笑って見せる。人好きのする優しい笑みだと思うが、なんとなく素直に信じていいものかと今更悩んでしまうのは、明らかに彼が飄々としすぎているせいかもしれないと栞は一人悩んでいた。
 兄のことで頭がいっぱいになるあまり、他の子どもたちのことを忘れかけていたが、今になって皆のことが気にかかってきている現金さにも呆れる。



「栞、前」
「え…?」


 その時からイヴモンからタイミングを見計らったように声がかかり、栞は目線を彼の指示通り前へと向ける。その声色に少しだけトゲが入っていることに気づいていたが、彼が不機嫌な理由を察しているつもりだったので特に気にはしなかった。のだが、彼が不機嫌になる理由が隣でのほほん、と「あれが選ばれし子供たちですかー」とわらっているので、間に挟まれた栞は少しだけ頭が痛くなったのは言うまでもない。だが表情に出すのは憚れたので、曖昧に笑って誤魔化した。


「…よかった、みんな、無事みたい」


 それほど離れて時間は経っていなくとも、この状況下、仲間が傍にいることがどれほど心強いことなのか身に染みて分かった。
 そんな栞に、真っ先に気づいてくれたのは、やはり空だった。


「栞!」
「空、みんな……」
「よかった、怪我はないわね。あなたもどこかに飛ばされたの?」
「ううん、私はどこにも…。みんなを探しにいって―」
「そう、ごめ……、……っ!」


 空の視線が、栞の横へと移される。


「ちょっと待って栞、あなた、隣のデジモンは一体、」


 優し気に丸みを帯びた瞳のその色が、とたんに警戒心に揺れる。先ほどまでは存在すらしなかった隣のデジモンをとらえて。敵を見据える鋭い眼光に、栞はあわてて首をよこにふる。―彼は敵ではないことを伝えなければ。


「この子はちがうの、この子は――」

「ヤマトっ!?――えーいっ!」


 栞の言葉にかぶさるように、布を切り裂く音が反響する。思わず吃驚して言葉は宙ぶらり、音がした方へと空とそろって視線を向ける。

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