「タケル…っ、タケルがピノッキモンに連れ去られた!!」


 起き上がりながら矢継ぎ早に伝えるヤマトは、ひどく焦った様子だった。それもそのはず、その言葉の内容を理解すれば誰だって困惑するだろう。
 “ピノッキモン”、“連れ去られた”というワードだけで子供たちの背筋が凍った。


「なんだって!?」
「大変…っ!」
「助けに行かなきゃ…!!」
「ピノッキモンとタケルはどこにいるんだ!?」
「どこだか分からない…っ」


 困惑と焦りがピークに達しているのだろう。泣きそうな声色でヤマトは頭を抱える。


「しっかりしろヤマト!!」
「きっと最初に動き出した道がピノッキモンのところにつながっていたはずです!」
「うん、そうだよ!」
「さっきの道を探そう!」

「ああ、それなら俺が近道をご案内できますよー」


 明確な目標のもと、活気づいた子どもたちの眼前に、のほほんとした空気の声が降り落ちる。


「だ、だれだ!?」


 聞いたことのない声だ―その声を追い求め、首を動かす太一の目に、声同様やはり見たことのない姿が映し出されて思わず目を瞬かせる。
 触ったら心地よさそうな白い毛、長い耳、緑色に輝く宝石のような瞳。それは彼らの仲間によく似ていた。相違点といえば、そのウサギと見間違うほどの長い耳くらいか―とじろじろそのデジモンを見て、警戒心の緩んだ自分を叱咤した。―いつの間に敵がこんなに近くまで!?―咄嗟に身構えると、少しばかり頼りない否定の声が間に入り込んできた。


「ち、違う、違うの!この子、敵じゃなくて…」
「栞――?おまえ、知ってるやつなのか?」
「…さっき、会ったばかりなんだけど…でも敵じゃないの!」


 と、やはりどこか頼りない声色だったが、語調は強く残る。その様子に太一は呆気にとられ、頭をポリ、と掻いた。


「敵じゃないっていったって…」
「みなさんは選ばれし子供たち、ですよねー?うわあ、感激だなー!あ、あくしゅしてくださいー!サインもほしいので、あとでいただけたら光栄ですー」
「え…?」
「あ、俺はアムモンっていいますー。どうぞお見知りおきをー」
「…アムモンは、えっと、」



 再び栞が彼の紹介をしようとしたところで、さっと一つの影が舞い降りる。もちろん、最後まで紹介がなされなかったのだが、アムモンはあっけらかんとした様子で耳を垂らしたり伸ばしたりと自由気ままにしていた。


「なんだ!?」
「ピノッキモンさまは今お遊びの時間です。邪魔をしないでください」


 のんきなアムモンとは打って変わって、冷酷な声色で子供たちを制したのは、ピノッキモンの部下であるキウイモンだった。絶滅したといわれる古代鳥型デジモンで、その羽は退化しており、飛ぶことはできない。その名の通り、キウイという鳥類によく似ていた。

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