「リトルペッカー!!」


 すぐさまキウイモンの必殺技が子供たちに襲い掛かる。
 コロモンはすぐさまアグモンに進化し、おそいかかるリトルペッカーをベビーフレイムで撃ち落とした。そのあとに続き、ピヨモンがマジカルファイヤーで、テントモンがプチサンダーで、ガブモンがプチファイヤーで応戦する。


「おい!!タケルはどこなんだ!!」


 焦燥感のにじむヤマトは、タケルを心配するあまり、正気を保てていないように思えた。そんなヤマトをちらりと一瞥したキウイモンの瞳に笑みが浮かぶ。
 じわり、と何かが心を侵食していく。それは黒い黒い感情のように思えた。「こたえろ!!!」その黒い感情をどうすることもできず、吠えるように吐き出した。


「ヤマト!今はやつを倒すことに専念しろ!」
「っおまえに、おまえに俺の気持ちが分かるか…!!」
「コイツのことを倒さなければタケルのところへはいけないんだぞ!?」
「ちがう…!!倒す前にタケルの居場所を聞き出すんだ!!――ガブモン!!」
「…分かった!――ガブモン、ワープ進化ァ!!」


 だが、彼の友情は、光らなかった。


「光、らない……」


 紋章を持ち上げ、呆然と呟く。


「どうしたの、ヤマト?俺進化できないよ…!?」


 進化できない――にやり、とキウイモンの口角があげられた。
 その口から再度、「リトルペッカー」、そう、必殺技が出されるはずだった。しかし、キウイモンは開いた口を、閉ざした。

 目の前に、透明なベールに包まれた、一人の少女が立ちふさがっていたから。



「キウイモン、タケルくんの居場所を教えて…」
「栞、っ」
「教えてほしい。…タケルくんはどこにいるの?」



 やけに静けさを保った声だった。一瞬、己の中のデータが書き換えられてしまうかと危惧するほど、その声色は冷たくも感じた。
 キウイモンは目を見開き、唖然とした。――これが、守人。小さく、弱い人間にしか見えない。だがその存在こそが、ピノッキモンの力を持ってしても操れない、この世界の秩序。われわれの、すべて。
 それだけが頭に思い浮かび、キウイモンは更にハッと目を見開く。――もし、この世界のすべてである彼女に『おねがい』されてしまえば、いちデジモンであるキウイモンにはそのおねがいを防ぐ術がない。
 彼女から『おねがい』をされる前に。先手を打たねばなるまい。キウイモンは一回目を閉じて、再び目を開ける。目の前にいたのはやはり小さく幼いただの人間だった。


「―では守人。あなたがこちらに来てくださればその少年を開放しましょう。ピノッキモン様にそうご提示いたします」


 こちらもやけに、静かな声色だった。真っ先に反応したのは彼女の傍でこちらをにらみつけている白いデジモンだったが、痛くもかゆくもない。――守人がわざわざ自分から目の前に出てきたのだから。お優しい秩序は、大切な仲間を見過ごすことなどできはしない。


「わたし……私が、行けば、タケルくん、返してくれるの?」


 案の定、彼女はすぐにくいついてきた。

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