「アイツを倒したらタケルの居場所が分からないじゃないか!!」


 ヤマトの目に、心の中に、薄らとした闇が芽生える。栞の中の闇を、彷彿させるほどに、おどろおどろしいものだった。まるで引き寄せられるよに、その闇に共鳴するように心が疼く。――危惧したことが目の前で降り落ちた。


「っヤマトくん、!」
「おい、落ち着けヤマト!!」


 進んでいこうとする服を引っ張って。 掴みかかろうとする拳をおさえて。
 栞と太一が必死に抑え込もうとするが、それ以上の力を彼は出していた。力を加減することなどない彼の目には、タケルの姿しか映っていなかった。


「……っ!!」


 だがしかし、彼を止められるものは限られている。彼が求めているものを差し出さなければ、彼の気持ちは収まりがつかない。彼が求めているものは、タケルの居場所。それが分からない限り、彼は言葉によって誰かを傷つけてしまうだろう。――友情の紋章が、光を失う。栞はそれを恐れた。

 八人そろわなければ。 世界は――。

 その時、小さな希望の光を目の端でとらえた。―なんて、いいタイミングだ。掴んでいた手をゆるませ、振り返り、目を凝らす。


「……タ、ケル、くん?」
「…タケル、…だって!?」


 ぽつりとつぶやかれた名前にすぐさま反応したヤマトは、最大限の力で太一の手を振り払い、同じように振り返る。


「おーい!!」


 大きな声と、小さな体。
 先ほどまでと変わらぬその姿、笑顔。


「タケル…っ!!!」


 その傍らにはしっかりとパタモンの姿もあった。全員ほっと息を吐いた。――ピノッキモンのところに捕まっていたというのに怪我一つないことに、笑顔で駆け寄るその姿に安堵したのだ。


「僕ね、ちゃんと一人でも自分の身を守ることができたよ!!」
「すごいねっ」
「偉いぞ、タケル!よくやった!」
「心配したわよ!」
「知らぬ間に成長したんだな」


 仲間内で末っ子だった少年は、たくましく成長した。もちろん、子供たちは、その成長を喜んだ。年上から口ぐちに褒められ、タケルも至極嬉しそうに頬を緩ませた。誰かに守られてばかりだった自分を払しょくできたことが、何よりも嬉しかったのだろう。


「ヤだなぁ、照れちゃうよー。地面を動かしてたおかしな仕掛けも壊してきたよ!」
「ほんとか!すごいぞ〜!」
「もうみんな大丈夫だからね!ピノッキモンはこの人形でみんなのことをあやつってたんだ!」


 どさりとおろされたリュックの中に詰め込まれていた人形のひとつ、自分とよく似たものをそれぞれ持ち上げ、全然似てないだのそっちは似てるだの笑い声が漏れた。


「あら、でもこの人形、栞の分がないわね。ねえ、栞、……栞?」


 八角形の、一つ欠けた角は――。


16/09/15

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