「…まあいいか。少なくともピノッキモンにさらわれたわけじゃないってことだもんな」
「でもそうだとしたら一体どこ行っちゃったんだろ?」
「…そういえばヤマトくん、ちょっと様子が変だったわ」
――手にした紋章が光らなかった。彼の中の友情が、彼を否定した証拠だった。
「ガブモンが進化できなかったみたいだね…」
「でもだからって―」
―その時、ヒカリの耳元を何かが駆け抜けていった。
良く知っている暖かい声に交じって、ノイズ交じりの違う声が幾重にも重なる。
「栞さん…?」
思わず振り返り、その気配を追いかけるが――。
「どうした、ヒカリ?」
「…また声が聞こえた…」
「声?ヤマトか!?」
同じように太一は耳を澄ますも、その声は一向に聞こえなかった。眉間に皴を寄せ、それから他の子どもたちへと視線をうつす。
「何も聞こえないぞ?空耳か?」
もちろん、その声は他の子どもたちにも聞こえはしなかったので、空とミミは顔を向き合わせた。
「でも、そう遠くないのかもしれませんね」
「…そうだな」
太一は子供たちに言った。
「行くぞ!」
だが子供たちの表情はどこか暗く、沈んだまま。それでも太一の言葉を受け歩き出す。抱えた感情は、各々だった。
ひとり、立ち止まったままのヒカリは、空を見上げた。
「――ちがう」
ぽつりと呟いた。それは先ほどの兄の言葉に対する否定。
「ヤマトさんの声じゃない」
最初は栞の声かと思ったが、どうやらそれもちょっと違うらしい。だから誰の声かは分からない。けれど、その声は栞によく似ていたし、少なくとも害のあるものではない。それだけははっきりわかった。
「ヒ、カリ…?」
そのつぶやきを拾ったのは、戸惑った表情をしたテイルモンだけだった。
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