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「悪いがアンタの話し相手になる気はない。…行くぞ」
苛立ちを抑えられず、背を向けて歩き出すヤマト。
だがその道を遮るように大きな枝――ジュレイモンの手が通せんぼをした。
「邪魔するな!」
「まあお待ちなさいと言ってるじゃありませんか。あまり年寄りを邪魔にするものじゃありませんぞぉ。ほっほっほ…」
いきり立ったヤマトが睨みつけるも、ジュレイモンは落ち着いた風貌でそのまま話を続ける。ゆったりとした笑い声が響いた。
「“この俺は一体なんなんだ”。“俺はこのままでいいのか?”」
ジュレイモンから吐き出された言葉に、ヤマトはハッとした。それはまさしく自分の中での目下の悩み、そして弱みであり、先ほどガブモンに吐き出した思いだったからだ。
「そうやってときに立ち止り、自分自身を見直すことは大事なことです」
「聞いていたのか!?」
「聞くも何もこの私に知らないことなど何もないのでございますよ」
「っそれじゃ教えてくれ…!!」
藁にも縋る思いだった。
たとえ相手が敵であろうとも、彼は、誰かに教えてほしかった。誰かに道を示してほしかった。
「俺は一体どうしたらいいんだ!?」
「どうしたら…ですと?近頃の子供はすぐ答えをしりたがる。自分では考えようともしない。いやはや困ったものですなあ」
揺れる瞳でジュレイモンを見つめ続けるヤマトの後ろで、ただガブモンだけが警戒心をむき出しにしたままジュレイモンをにらみつけていた。
「ヤマト!こんなやつ聞くことなんかないよ!行こう!」
ガブモンが鋭い声をあげ、ヤマトは彼を振り返った。
―よかった。ヤマトには、まだ自分の声が届いている。
「よろしいのですか?もっと強くなりたいのなら自分を磨くことです」
ガブモンが安堵した瞬間、再びジュレイモンはヤマトにとって甘い言葉を投げかけた。
「自分を磨く?」
「さよう。口で言うほど簡単なことではございませんぞ?それなりの覚悟が必要です」
その言葉が、彼の中のスイッチを押したのか。
目の前のすべてを睨み据えて、ヤマトは吐き出した。その後ろで、ガブモンが悲痛な表情を浮かべているなど、知る由もなく。
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