「どうして…!!?」
もちろん、彼は動揺を隠せなかった。“仲間”なのに、どうして攻撃してくるんだよ。
そんなアグモンに近づき、感情の読み取れない声でメタルガルルモンは告げる。
「アグモン、勝負だ!―究極体に進化しろ!!」
「やだよ!どうして戦わなくちゃいけないんだよ!?」
その尋常じゃない様子に、アグモンも口を引き締め、彼をにらみつけた。
だが戦いを強要するように、メタルガルルモンはまたも無言でアグモンへとミサイルを放つ。無防備なアグモンは身を屈めることでその攻撃から難を逃れた。
「ヤマト…!?何、何してんのよ!!?」
「おい、ヤマト!早くやめさせろよ!!」
彼らには、何が起こっているか全く分からなかった。しかし、自分たちは仲間同士だ。いえばやめてくれる。そう、これは悪い夢に違いない。どうしたんだよ、ヤマト。メタルガルルモン。
そう期待して、子供たちはヤマトを振り返る。嘘だって、言ってくれよ。
だが現実は無情にして、非情だった。
「―――…やだね。断る」
感情を押し殺すように、地を這う声に、栞はただ俯くことしかできなかった。
「断るって…おまえ…!?」
思いもしなかった反論の言葉に、焦った表情でちらりと背後のデジモンたちへと視線をおくる。
「次ははずさないぞ!さぁ、はやくウォーグレイモンに進化しろ!!」
「…っ本気、なんだね?」
子どもたちはその様子をかたずをのんで見守ることしかできない。
とまどうタケルは、慌ててヤマトへ視線をやる。「おにいちゃん」と、そう呼ぶ。しかし彼はタケルを見ることはない。その表情は今まで見てきた兄の表情どれとも違っていたので、余計に戸惑う。
―それはまさしく、闇、そのものだ。
彼はもう。
こちらには。
こちらには、戻ってくるつもりがないのだろう。
されど。
「欠けた…角は…」
栞は胸の前で両手を握りしめ、ぽつりと呟いた。
「…大丈夫。きっと……きっとわたしが…」
その様子を見守る、青と緑の瞳。対の色が、それぞれの思いを乗せて、彼女を見つめる。
「私が…なんとかするから。…欠けた角が…なくなることは、ない…」
どこか剣呑とした目つきで、子供たちを見やる栞の瞳が、今までにないくらい赤い光を帯びた。
★ ★ ★
その交錯した様子を木の上から楽しそうに見守る一体のデジモンがいた。
「ちょうどいいところに間に合った!さあ、楽しませておくれよ?」
17/05/01
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