「あ……」
茜色の空によく映える七色に煌めく光。瞬時、ヒカリは悟った。導いていたのは栞の“声”だったけれど、この光の結晶は、その声とはまた違ったものなのだということに。そしてこの光こそ、あの時感じた声の主なのだと。
「ヒカリ、慎重ニ。…悪イものデはナイと思うケド危険がナイとは限らなイ」
「うん…だけど……」
更に一歩進み出て、ヒカリはその光を見上げた。連れてきたのは紛れもなく栞なのだったら、これはイヴモンの言う通り、あまり悪いものではないのではないだろうか。
「あなたたちは敵なの…?それとも味方なの……?」
それは傍から見たら、不思議な光景だった。
「ヒカリさんは一体誰と話をしているんです?」
「…分からない」
先ほどまでいた場所にヒカリがいなかったので、テイルモンは急いであたりを見回し、木々の隙間からヒカリとイヴモンの姿を発見して、その背後で立ち止る。そんなテイルモンに声をかけたのは光子郎だった。
そういえば、前にも同じようなことがあった。守人である栞の耳に届いた声を、同じように聞くことができたヒカリ。いつだって、あの子には、どこか不可思議な力を秘めているように感じていた。
「そう…敵じゃないのね…。うん……“守人”って栞さんのことよね…栞さんがここに導いてくれたの」
「……ねえ、ヒカリ。“彼ら”はなんて――」
イヴモンにも、やはり声は聞こえなかった。何故ヒカリには“彼ら”の声が聞こえるのか、それの理由もなんとなくだが、イヴモンは理解していた。ヒカリが“彼”と似ているから。イヴモンは一度目を瞑り、その話の内容を問いかけようと首をあげたその瞬間。
結晶体だった光の粒が、大空へ舞い上がり、眩いばかりの光となってヒカリ自身に差し込む。それは見るものによっては、ヒカリを取り込もうとしているようにも思えた。
「ヒカリ!?」
突然の出来事に、更に言えば少しだけ苦しそうに胸を抑えるヒカリのもとへテイルモンと光子郎が駆け寄ってくる。だが彼女はふらついた足元をしっかりと耐え、胸元から紋章を取り出すと、空に掲げた。
七色の光は、ますます輝きを放つ。掲げられた“光”の紋章に向け発光し、それは周囲にいた者たちや、景色すべてを覆い尽くすほどの閃光となった。
近くにいたイヴモン、テイルモン、光子郎も。光子郎のもとへやってきたテントモンも。殴り合いを続けていた太一とヤマトも。泣きわめていたミミと、宥めていた空も。不安げに見守り続けていた丈とタケルも。デジモンたちも。究極進化をしていたウォーグレイモンとメタルガルルモンはコロモンとツノモンに退化をして。子供たちを観戦していたキノッピモンだけはその光に耐え切れず吹き飛ばされていったが。
そして。
微動だにしなかった栞は、その光を見上げ、柔く微笑んだ。
17/09/30
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