128 終りは望めば訪れる
目がくらむほどの眩い光に視界を奪われ、子供たちは呆然と立ち尽くしていた。周囲を見回しても己たち以外の存在は見当たらず、景色もただ永遠と白い空間が広がるだけだった。
「これは……」
「どうなっちまったんだ…?」
このような状態で喧嘩をしているわけにもいかず、というよりあまりの変化についていけず、太一とヤマトも同じように周囲を見渡しながら困惑を隠せなかった。激しい戦いを繰り広げていた究極体デジモンたちも、光の中でいつしか退化してしまっていたものだから余計に困惑してしまった。
「――光あるところに自ずと闇は生まれるもの」
「!?」
幼い少女の抑揚を感じられないその声が、その空間に響き渡った。その声は、彼らにとってなじみ深いものだったが、どうにもその声と言葉が結びつかず結果、それは他人であると判断した。とはいえ、そこまで思考が行き着いたのはほんのわずかな人数であろうが。
「光と闇は、ちょうどコインの表と裏のような関係。しかし、闇の力が増大すれば――」
子供たちの困惑を他所に、少女の言葉はつづけられ、それと同時に世界は黒く塗りつぶされていった。瞬く間に、彼らは闇に包み込まれていた。
「夜になっちゃったの?」
「ここはどこだ!?異次元空間なのか!?」
「待って!何か見える…!」
空が真っ先に異変を察知し、鋭く背後を振り返った。
それは泣きたくなるほど懐かしい―――目の前に広がる光景に、子供たちは目を見開いた。
「ここは――光が丘だ!」
誰かが言葉を漏らすよりも前に太一がそう声をあげると、彼らの足元には宵闇に包まれた見覚えのある町が形成されていった。しかしそれは、彼らのつい直近の記憶にある光が丘とは異なっていた。―破壊の跡が残る住宅街の真ん中で、巨大な恐竜と鳥の姿があったのだ。その二体は、夜空に開かれた眩い光の中に吸い込まれようとしていた。見覚えのある後継に、ふ、と彼らは気づいた。閉じかけた記憶の蓋をゆっくり開けられ、その光の正体がこちらと現実世界を繋ぐゲートだったと知る。
「これは四年前の…!!」
光子郎は直ぐにパソコンを開き、キーボードを慣れた調子で叩くと、彼らが目撃した鳥のデジモン―パロットモンのデータがあらわれた。
「完全体だったんだ…」
当時はその概念を持たなかったので、完全体などとそこまで強いデジモンだとは思わなかった。
「皆さんの世界で四年前、一個のデジタマが誤って次元の裂け目に通り抜けてしまいました」
耳にするりと入り込んできた説明に、ここで漸く、太一は今までの違和感に気づいた。彼女は―己の妹は、何故こんなにも事情に詳しいのだろう、と。デジタルワールドの知識は彼女よりも先に旅をしてきた自分たちの方が詳しいだろうに。だから、自然と感じた疑問を投げかけたのだ。
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