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 いつまで飛び続けるのだろう、と子供たちが感じ始めた頃、氷に包まれた大地にたどり着いた。その終着点は、全てがはじまった場所だった――。


「ファイル島だ!!」


「それから長い長い時が経ちました」


 いつしか、デジタマに亀裂が走り、殻がふるえた。それは生命の始まりを意味した。


「あっ、生まれた!!」


 デジモンたちが、誕生した瞬間だった。


「覚えてる…。僕たちずっと待ってたんだ…」


 デジモンたちはひたすら待ち続ける。その日がくるまで。
 氷におおわれていた大地に草木が芽吹き、今度は緑に包まれる。その大地の上で元気よく飛び跳ね、そうして。


「太一を…」「ヤマトを…」「空を…」「丈を…」「ミミを…」「タケルを…」「光子郎はんを…」

「幾日も幾日も待ったんだ…。そして、ある日…」


 それは、殆ど直感だった。もうすぐ大事な人がやってくる――そうして空を見上げると、オーロラが高く空を揺らした。まるで春の訪れを告げる柔らかな風のように、優しく。ずっと待ち続けていた人が、空から降り注ぐ。
 それはまるで一筋の希望のように。


「…ダークマスターズの最終目的がなんなのか、どうすれば世界を救えるのか。今の私たちに出来ることはデジモンワールドの異変を感知し、それを修復するシステムを事前に用意すること」
「俺たちはこれからどうすればいい?」


 太一はまっすぐ『ヒカリ』を見つめる。その瞳は、妹を見るものとは異なっていた。デジタルワールドの危機を憂うものに対しての、誠実な姿勢だった。


「……分かりません。でも皆さんならきっと自分の力で答えを見つけられると信じています。そして、この世界を。……あの人たちを――どうか…」



「………そう。“おまえたち”なら、きっと――」


 不意に、心臓を掴まれたような気がした。
 そういえば、栞はどこにいるのだろう。振り返った太一の目に、彼女がしっかりとうつった。彼女は自分たちの後ろにしっかりと存在していた。柔らかな笑みをたたえ、太一をまっすぐ見つめている。
 何故か、そう、あの時と――ナノモンに空を連れ去られた時と同じ匂いがした。あの時、栞に掴みかかられた時と、同じにおいだ。
 そして太一はようやく気づいた。


「栞――」


 今の『彼女』は、彼女であって、『彼女』ではないのだ、と。


2018/01/24

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