だから君はその手をとって
「真田さん、私と一緒にペアにならない?」
いつもひとりでぽつんと寂しそうに、けれど誰も寄せ付けない雰囲気の女の子が、私のクラスにはいた。どうして誰とも話さないのだろうとか、どうしていつも怯えているのだろうと不思議に思っていたけれど、特別、自分から話しかけることをしたことはなかった。私にとって真田栞という女の子はとてもとても印象の薄い女の子だった。
「武之内、お前を見込んで頼みがある。聞いてくれるか?」
先生に声をかけられたあの日から、私にとって栞は特別になったのだ。
栞は大人しくて、臆病で、いつも不安そうにしている子だった。でも反面優しくて、実は頭が良くて、周りのことをよく見ている子でもあった。それに虫一匹すら殺せない女の子だから、私が守ってあげなくちゃ。次第に先生に頼まれたからではなくて、自分の意思で栞と過ごすようになっていった。
じつは笑うとかわいくて、ピアノが好きで、絵を描くのも好きで、知れば知るほど、栞のことが好きになっていった。親友だって、思えるほどに。
「なんで、なんで、邪魔をしたの!空が邪魔をしなければピッコロモンは死ななかったかもしれなのに!私が、私があんなやつら、倒して!!」
変わっていく栞を見たら、胸のあたりがぎゅうっと締め付けられるように痛くなった。イヴモンに聞かされた時、なんであの子なのって思った。
「友達だからに決まってるじゃない!あなたのことを死なせたくないから!大切だから!!」
―それでも栞は、栞でしかない。笑う栞を見て思う。いくらあの子が守人だろうが、世界の秩序だろうが、栞は私の親友だ。大人しくて、臆病で、優しくて、あたたかくて、私の大切な人だ。どんなに栞の中で何かが変わろうとも、私の中の思いは消えない、変わらない。 きっと、それは、はじめて栞に会ったときから決まっていたんだ。先生に頼まれるよりもずっと前から、私たちはきっと。だから、大丈夫よ、栞。私はあなたの味方だから。何があっても、私はあなたの親友だから。一緒に進んでいこう。何があってもこの手を離したりしない、あなたを1人にはしないから。
大好きよ、栞。
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