先ほどまで、SAIは「嫌だっ!僕赤ちゃんいらないっ!ナマエちゃんが死んじゃうなんて嫌だああっ」と騒いでいたが、ナマエに迫られたら彼の性格上断りきれない。つまり帰ったら即子作りの可能性が高いということだ。そんなナマエをおめおめと帰せる訳もない。
「せっかくだからホワイマンに会ってみたいです」
泣いているSAIを得意の口八丁で宥めすかしたあと、思い立ったように言った彼女へ僕は快く是の返事をした。
しかしSAIが、鼻をグズつかせたまま猛烈に反対した。
「いやだっ!ホワイマンがナマエちゃんに恋しちゃったらどうするんだっ!」
「恋するに決まってる!嫌だ!嫌だっ!」とごねるSAIに、「機械なんでしょう?しませんよ、人間に恋なんて」とナマエが軽く反論をして、僕もそれに頷いた。
仮に万が一そんな事態になったとしても、今夜中にナマエが訳の分からない思想のせいでSAIと身体的に結ばれてしまうより、機械生物に片想いが芽生える方が遥かにマシだ。
「僕たち初代復活組だけがホワイマンとの交流を独占するのは不平等だ」
SAIの反対を押し切って、千空たちのいる作業場へと顔を出す。カプセルに入った彼は、いつも通り千空の側を漂っていた。
「ホワイマン、君にお客さんだ」
「キャク?」
ふわふわと宙を泳いでやってきたホワイマンが、見慣れない人間を品定めするように少し高い位置からナマエを見下ろす。
「初めまして、月からの旅人さん」
「⋯⋯お前、誰だですカ?」
「申し遅れました。七海ナマエと申します。私は貴方を何とお呼びすればいいですか、ダイヤの心臓の旅人さん?」
花の綻ぶように微笑むナマエと、中々返答しないホワイマン。
勘だとか恋の話題だとかには全く興味もなく疎い僕だが、イレギュラーなホワイマンの反応に「あ、まずい」と察知せざるを得なかった。