人類は約3700年間石化していたらしい。
SAIから話を聞き、当時のニュースや石化解除の旅について描かれた漫画を読んで、私は自分が目覚めるまでに起きたことの大まかな流れを把握した。

「確かにこれは、石化したままの方が良かったかな⋯⋯」

調べれば調べるほど、今更復活して自分に何ができるのかと無能な自分に絶望する。
石油や鉱山権利の確保、通貨発行権の取得。
七海家再興のために手をつけるべきだったことは全て龍水に先を越されていて、今更その上を行くのは難しい。
いまや七海財閥は「龍水」財閥だ。父が愛人の息子、放蕩し放題の七海の面汚しと名を聞くたびに苦虫を噛み潰したような顔をした、あの龍水の支配する財閥。私の知っている、父の愛した七海財閥は跡形もなく消え去ってしまったのだ。

SAIには言えないけれど、父がSAIと結婚しても良いと言っていたのは、天才数理士である彼を引き込むことで七海本家の力を削いだ上で自分のものとしたかったからだ。七海財閥が無くなり、父の所在も不明な今、SAIと結婚してもほとんど意味がない。
そしてこれはさらにSAIには言えないけれど、こうなってしまってはSAIと結婚するよりも、龍水と結婚した方が遥かにいい。龍水と結婚すれば、龍水財閥を自分が乗っ取り、再び七海財閥として復興させることができる。
そうすればきっと、父は喜んでくれる。再び七海財閥の頂点に返り咲くことが、父の唯一の悲願だったのだから。

「なんて、言えないよなぁ⋯⋯。誰にも」

SAIだけじゃない。こんなこと、誰にも言えない。
皆が人類の未来のために、自分のできることを精一杯にこなして生きている。それなのに、私は。
⋯⋯私は、自分のことばっかりだ。人類の存続と早急な文明発展のために、もっと気にしなければならないことはたくさんあるのに。
そう、たとえばあの、困った現象のこと、とか。

周囲の人が、何もしていないのに突然壊れる。

NASAでも七海の会社でも何ともなかったから、もう治ったのかもしれないけれど、万が一があったら困る。
このストーンワールドで、優秀な人材が一人でも壊れてしまったら人類の復活や文明の復興へ洒落にならない被害が出てしまう。都市部に行けば人が掃いて捨てるほどいたような、21世紀の世界とは違うのだ。

誰にも迷惑がかからないように、何とかしなければいけない。それができないなら、集団にとって害悪になる私は今すぐ自ら消えるべき――。
頭では分かっているのに、「一緒にいて欲しい」とSAIに頼まれたのを良いことに、こうして彼の後を金魚の糞みたいに着いて回って、ロクな対策もせずに外へ出ている。

⋯⋯一人になりたい。

プログラミングに集中し始めたSAIが私の所在を気にすることはないだろう。3時間くらいは、周囲を散策して回れそうだ。
両手を動かして一心にプログラムを打ち込んでいるSAIの後ろへ大きめの石に挟んだ置き手紙を残し、私は木々のそよぐ森の方へと足を向けた。



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登場人物設定
主人公:金髪碧眼の女。愛読書はハリーポッター。
ゼノ:本名ゼノディウス。火星からやってきた知的生命体で、火星に帰るためにNASAで研究をしている宇宙人。最も愛する相手には俺様口調になり、一人称も俺様になる。同じく火星出身の友人・スタンリーと人類抹殺を目論んでいる。
SAI:インド人。本名は七海サイアムだが、ネットアカウントなどではヒカルの碁を真似てSAIと名乗っている。数学者なので引きこもりだと思われがちだが、ガンジス川で泳ぐアクティブな趣味を持っている。愛読書はハリーポッター。乳糖不耐症なので牛乳を飲むとお腹がぐるぐるする。


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YA'ABURNEE



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主人公:金髪碧眼の女。愛読書はハリーポッター。
ゼノ:本名ゼノディウス。火星からやってきた知的生命体で、火星に帰るためにNASAで研究をしている宇宙人。最も愛する相手には俺様口調になり、一人称も俺様になる。同じく火星出身の友人・スタンリーと人類抹殺を目論んでいる。
SAI:インド人。数学者なので引きこもりだと思われがちだが、ガンジス川で泳ぐアクティブな趣味を持っている。愛読書はハリーポッター。


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