登場人物設定
真経津晨一郎:大学生で銀行の地下賭博場に現れるギャンブラー。人間ボウリングが趣味で、ストレスが溜まると人間をピンに見立ててボールを全速投球する危険人物。一人称は僕だが、本気を出すと「俺」になり、目の色がトランプそっくりな赤色に変わる。
獅子神敬斗:アメリカ人。銀髪のイケメン。昔は貧乏で、段ボール肉まんを食べていた。気分が高揚すると「Hey!」や「Come on!」と英語をしゃべり出す。


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「何でお前らもいるんだよ!!!」

何故か成り行きで真経津にチキンを振る舞う約束になってしまった。
これだけでも不本意な事故なのに、真経津の家へ足を踏み入れるとリビングには"いつもの"面々が揃っていた。早すぎる展開に、獅子神は頭を抱える暇すらない。

「良質なチキンが食えると聞いたが?」
「神への供物を用意していると」
「ゴチソウだってメッセ見てさー。チキンまだー?」

ワイワイ、ガヤガヤ、グダグダ。
クセが強く、集団行動という言葉とは縁もゆかりもないような彼らが口々に喋る。
うるさい。そしてめんどくさい。

「……えっと、けいちゃんの……お友達?」
「あーー……まあ、そんな感じ?」

他人の腹を割くのが趣味のイカれた医者に、自称神のイカれたコスプレ神父に、他人を閉じ込めて監視するのが趣味のイカれたストリーマー。知り合いに友達として紹介したい面々かというとちょっとかなり微妙である。むしろ積極的に繋がりを隠したい。

「お医者さんに神父さんに配信の人かあ。けいちゃん、いろんなすごい人とお友達なんだね。……なんか遠くに行っちゃったみたいでさみしいかも……」
「ンなことねェよ!俺はナマエちゃんと——」
「獅子神さーん、チキンはー?」
「テメェはちょっと黙ってろ!!それと食器で遊ぶんじゃねェ!!」

白い皿の縁をフォークでキンキンと叩いてチキンを催促する真経津を肝っ玉母さんのように叱りつけながらも、獅子神はキッチンへと向かって歩いた。
なんだかんだ言いながら見過ごせずに手伝ってしまう。厄介事を押し付けられて損をする側の性格だ。

「変わってないね、けいちゃん」

そう言ったナマエが、きゅっと獅子神の手を握る。「行こ!けいちゃん!」といつも自分を引っ張っていた彼女の手が随分と小さく女らしくやわっこくて、獅子神はドキリとした。

「獅子神さーん、ボクのお嫁さんをえっちな目で見ないでくれるー?」
「だからテメェのヨメじゃねーだろ!」
「すぐにそうなるから間違ってないよ」
「その自信はどっからくんだよ……」

呆れ気味で獅子神に言われても、真経津は微笑みのようなものを浮かべたままナマエのことを見つめていた。
遊んでいる分には良くても、ギャンブルとなると真経津は底知れない危険人物だ。そんな相手に自分の幼馴染が獲物を付け狙う目で見られているのは放っておけない。

「ナマエちゃん、悪りぃけど料理手伝ってくれないか?」

獅子神はキッチンにナマエを連れて行こうとした。

——それなのに。

「貴方に1つ質問があるのだが、」
「オイ!ナマエちゃんは今から俺と料理すんだよ!」

ソファからナマエの目の前までやってきて、村雨が何故か絡んで来た。ほぼ反射で獅子神は抗議したが、村雨の冷静な視線を向けられて言葉に詰まった。ギャンブルをしている時と同じ、相手の真意を捉えようとする目だ。

「何故私が医者だと?」
「——!」

村雨の言葉に、獅子神はハッと息を呑んだ。

——言っていない。
村雨は「医者です」なんて一言も名乗っていない。
格好で分かるエセ神父やクソストリーマーと違って、今の村雨は白衣や聴診器を身につけている訳でもない。

どういうことかとナマエの顔を横から覗くと、彼女はただ困った表情を浮かべていた。

「ごめんなさい。私、昔から思い込みが激しいところがあるみたいで……」
「どこに私を医者だと思い込む要素がある?」
「え。そういえば、そうですね……?」
「は?」

沈黙。
ナマエは少し首を傾げて不思議そうに村雨のことを見ているし、村雨は目の前の女がそうしているのを見たまま立ちつくしている。

「貴女、手術のバイトに興味はないか?」
「えっと、私は医者じゃないのでそういうバイトはできないです」
「大丈夫。手術を受ける方だ。貴女の腹の中が見てみたい」
「アーーーー!!新鮮なうちにチキンが作りてェな!!!ナマエちゃん、早くキッチン行こうぜ」

アウトアウトアウトォォォォ!
何も大丈夫ではないし、手術を受けるバイトなんて十分イカれているし、腹の中を見たいなんて変な方向の興味を持つな。そして言うな。

真経津には未来の嫁認定されて、村雨には腹を裂く対象として興味を持たれる。最悪だ。これ以上イかれた奴らと一緒にはしておけない。
特に頭のヤバいツートップまで参戦してくる前に引き上げなければ。

獅子神は半ば強引にナマエの手を引っ張ってキッチンへと続く廊下を早足で歩いて行った。

「村雨さん、横取りはダメだよ」
「鏡に言っているのか?彼女が貴方と親しいようには見えない」
「仕方ないなあ。ボクとナマエさんに子供ができて帝王切開になったら村雨さんにお願いするよ」

ヘラヘラした言い方に、「断る」と喉元まで出かかって、村雨は考え直した。

彼女の腹の内が見たい。
どう見ても平凡なOLでしかない彼女の、卓越した勘……のようなもの。あの反応が本当のものなら、彼女はまだ自分のその非凡さに気づいていない。末端のギャンブラー程度なら余裕で凌げる勘の強さも、その利用価値も。
しかも、彼女はその勘の良さ故に真経津が危険な人物だと気づき、警戒していた。普通の人間なら警戒されているとは気付けない、ギリギリの範囲で。
無自覚にそれをやってのける人物の腹の中がどうなっているか、確認したい。
腹の中が見られるのであれば、惚れた腫れたの騒ぎはどうでも良い。

「……考えておこう」

考える、とは言っても腹の中を見たいというこの欲望を抑えきれないことを真経津は分かっているのだろう。
圧倒的な勝ちを確信した時のように、真経津は愉快そうな微笑みを浮かべていた。







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